猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

 OH MY GIRL 「CLOSER」の衝撃

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2016年、秋。

私は穏やかに沈み行く日常の中にいた。

期待や希望といった言葉はいつの間にかうち棄てられて久しく、色褪せた夢を追うふりをしながら、現実には惰性で生きる日々。戦わずして倒れた戦士。飛び立つ事のなかった雛鳥の化石。

いま思えば、一年前の私はただ一個の残骸であった。

残骸(猫好き)であった。

 

なのでその日もモニターの前に座り、おもしろ猫動画を探していた。

あるサイトで手を止める。

そこは雑多な話題をネットの掲示板から拾ってくるところで、何気なく立ち寄ることの多い場所だった。

いつも通り記事のタイトルに目を走らせる。

猫関係は無かった。いつでも面白い話題が転がっているわけではない。

しかしいくつか並んだ見出しの中で、なんとなく私の注意を惹いたものがあった。

「韓国のアイドルにこんな可愛い子がいるよ」というような他愛のないタイトル。

何の期待もせずにクリックした先にはアイドルらしき少女がひとり、映っていた。

短い黒髪が印象的で、誰か似てる日本の有名人がいた気がするけど思い出せない。

どこかいたずらっぽさを感じさせる少女の面影だ。

確かに可愛い。

いや、かなり可愛い。

しかしこちらとて生まれたての小鹿などではない。

プルプル震える脚で見たものをそのまま信じるような年はとうに過ぎた。

そもそもアイドルに心動かされる事など生まれてこのかた一度も無かった。

幼少の頃より私の心を捉えてきたのは三国志であり史記であり司馬遼太郎であり藤沢周平だった。

つまり髭面のおっさん達に夢中だったと言える。

アイドルの付け入る隙など私の心にはなかった。自分にとっての極地的存在。

彼女達はあくまで、テレビでよく見るけれど興味の無い風景のひとつに過ぎなかった。

可愛いけどだから何? というのがアイドルに対する私の基本的態度だった。

なのでこの時も「確かに可愛い。じゃ、次の話題!」という感じで流すつもりでいた。

だがそこには、ステージを一曲丸ごと映したらしい動画が貼られていた。

おや、と思った。

日本だとこういう映像に関する権利関係は厳しいはずで、ライブの最中にファンが自由にカメラを構えている光景など見たことがない。

韓国だとOKなのか、という珍しさも手伝って私は再生ボタンを押した。

3分程度の動画だった。

 ……結局、その後4,5回続けて関連動画を見ることになった。

その頃にはOH MY GIRLというグループ名と、ビニというボブヘアの少女の名前も覚えていた。

加えてKPOPアイドルの優れたパフォーマンスも。

キレのある振り付けはもちろん、表情・視線・首の角度など細かな点に至るまで妥協無く仕上げられた作品のようだと感じた。

曲も踊りも可愛らしく溌剌としていていつまでも見ていられた。アイドルという言葉にそれまで感じていた平凡なイメージはいつの間にか消えていた。 

そんな動画のひとつがこちら。サムネからして圧倒的可愛さ。

 FANCAMという存在を知ったのもこの時だった。

一曲まるごと、そのアイドルひとりだけを追いかけるカメラ。

その撮影スタイルは対象の魅力を漏らさず、余計な脚色無しに伝えてきて邪魔が無い。

少女の可憐さ・可愛らしさとアスリートの鋭さ・強さを合わせたような彼女たちの動きに感心しつつも、まだこの辺りまでは私も平静を保っていた。

自然と指が次の映像をクリックする。

そして、ひとつの曲に辿り着いた。

画面の向こうでは膝を抱えた少女達が静寂の中、円を描くように座り込んでいる。 

ひとり立ち上がったメンバーのユアさんが夢見るような眼差しで歌い始めると、皆が一斉に動き出す。

「CLOSER」が始まる。

 

 

曲が終わり、しばらくして、ようやく何かに心奪われた自分がいることに気付いた。

私はすぐにモニターから目を離した。そして世界はなにも変わっていないということを確かめようとした。

机の上に置かれた時計、転がった鉛筆、倒れている目薬までさっきと同じ所にある。

部屋の外からは微かなテレビの音。外を走る車列の喧騒。

なにもかも以前のまま。でもなにか変だなと思う。

しばらくの間ぼ~っとしてたら、心の底からぼんやり浮かんできた感想がある。

「アイドルとはこういうことが出来る人達の事をいうんだな」と。

 確かに世界は少しも変わってない。

ただ、世界を見る自分の目が少し変わったのを感じた。

どうして世の中にはアイドルに夢中になる人たちが大勢いるのか。その理由を今更ながら知らされた思いだった。

映画でも小説でもゲームでも、今までも何かに心動かされた事はある。

でもこの時に感じたのは今まで感じたどの感情とも少し違う。

なぜ自分が「CLOSER」を素晴らしいものと感じたか。それはアイドルの魅力を「可愛さ」ではなく「美しさ」で表現することに成功したからではないかと思う。

そこにはなんの言い訳も用意されておらず、わざとらしさもない。真剣にアイドルの可能性を信じた人達の勝利があるのみ。

幻想的で美しい世界観の中、優雅でどこか物悲しく舞う少女達。そこに響くスンヒさんとヒョジョンさんの二人による素晴らしい歌声。

更には、ジホ・ビニ・ユアを中心とした4名がダイヤを形作るシーンの美しいこと!

結局、この時の経験をきっかけとして私は色々なグループのファンとなった。

LovelyzにAPRIL・Dreamcatcher・宇宙少女やクグダン等々。魅力的なアイドルを次々と知るたびに喜びを覚えた。

そして、こういう感覚は初めてじゃないということを思い出した。

そう、あれは三国志を初めて読み終えたときの懐かしい感覚。「英雄・豪傑がこんなに沢山! すごい!」と当時の私は思ったのだった。

今、多数のアイドルがひしめくKPOPの世界は、まさに百花繚乱の戦国時代といえる。花が戦うというのも変な表現だけど、アイドルの世界はきっとそんな感じだ。

最近はついにファンイベントに足を運ぶまでになった。まさか自分がアイドルのライブを見に行く事になるとは。

こういう現場は自分から最も縁遠い存在だと思ってた。ボディビル選手権大会の会場とか、エアロビの……とか、そんな感じの。

なんか大げさな文章を長々と書きましたが、このブログはそんなアイドル達にかわいい!と言いたいだけのブログになる予定です。

何事にも飽きっぽい自分が不安ですが、できる限り続けていきたいと思います。