猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

日韓アイドルの融合が生み出すものは新たな女神か、それとも。「PRODUCE 48」展望

二つの国のアイドル

世界に冠たる二大アイドル強国、日本と韓国。

しかし、同じアイドルという呼び名を使いつつも、その形態に大きな違いがあることは良く知られている。

日本のアイドルが、たとえ技術的に未熟でも、幅広い意味での魅力があればファンから受け入れられるのとは対照的に、韓国のアイドルは「成熟と完成」を求められる。例え14歳の少女であっても年齢は言い訳にならず、不十分なスキルでステージに立つことは許されない。スパルタ式ならぬ韓国式アイドルトレーニングの厳しさと要求の高さは有名だ。

しかし一方で、日本のアイドルには「総合的魅力」のようなものが求められているように感じる。時には容姿に対する評価すら超えた「可愛さ」でアイドルの人気が決められる様子は、部外者には不可思議な光景でさえある。

そしてこの二つのアイドル像は、しばしばその優劣について語られてきた。

前述のように韓国のアイドル練習生はデビュー前に長期間に渡って厳しい訓練を積むのが普通なので、日韓アイドルを比べた場合、舞台上での技術的な差は確かに存在する。

ただ個人的にはこうした比較があまり意味のあることとは思えない。この違いは二つの国のファンが、それぞれアイドルにどのような姿を求めているかの差だとも言える。つまり、優劣ではなく理想のアイドル像の違いなのではないか。だから日本のアイドルが劣っているなどという言い方は正確ではないと思う。

それぞれの国に、それぞれの求めるアイドルの形がある。それで良いじゃないかと、日本と韓国のアイドルを比べる話を聞くたびに考えていた。

しかしそうも言っていられなくなった。事態は急変した。

「PRODUCE 48」突然の発表。

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そもそもの始まりは2017年12月。横浜で開催されたエムネット・アジア・ミュージック・アワード(通称 MAMA)にて、電撃的に「PRODUCE48」が発表されたことにある。

2016~17年にかけてエムネットが製作し、韓国で空前の大ヒットを記録して社会現象にまでなったアイドル・サバイバルオーディション番組「PRODUCE101」と日本の秋元康が協力して新たなアイドルグループを生み出すという。

当時の私は非常に醒めた目で突然のニュースに接していた。「秋元康が韓国のアイドルをプロデュースする」という紹介のされ方が原因だったと思う。

良く知られているようにAKBグループはアジア各国に「48」のアイドルシステムを輸出している。それと同じものが韓国にも出来るだけだと、そう思った。

余計なことをするものだと、KPOPファンとしては苛立たしくさえあった。韓国には韓国のやり方がある。今更SEL48とか言い出すつもりか?

ところが徐々に明らかになってくる詳細を知るにつれて「PRODUCE 48」に対する印象が大きく変わってきた。そしてこれは無視できるものではないと思い直した。

その最も大きな理由は、エムネットが従来どおり全面的に関わって番組を主導していくらしいことが分かったからである。

私はエムネットが関わるサバイバルオーディションを通して生み出されるアイドルの完成度を信用している。

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I.O.IにWANNAONE、そしてTWICE。この錚々たる顔ぶれを見ればその手腕の高さは伝わると思う。更に最近ではモモランドの躍進を見て、その考えを更に強めた。

エムネットが関わったモモランドのデビューサバイバル番組は一般には失敗したものと見なされていた。視聴率も振るわず、モモランドもデビュー後に目立った活躍が出来ていなかったからだ。

ところが今年に入って、いきなり日韓での大ヒット。 そこで初めて気付かされたのは、そもそも最初の時点で優れたメンバーが選ばれていたということ。こちらがその力に気付いていなかっただけだった。

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という訳で、もしこれまで通りの「PRODUCE101」のシーズン3であったなら、ただ純粋に楽しみなだけだったと思う。

しかし今回エムネットが手がけるのは日韓アイドルの合同グループ。しかも日本側参加者は全てAKBグループ所属の現役アイドルだという。

これは前代未聞のプロジェクトだ。どう展開していくのか、ちょっと想像できない。実際、ファンの反応も賛否両論である。

私はエムネットの手腕を高く評価している。しかし今回ばかりは期待と同じくらいの不安を感じている。果たして信用していいのか。

先に述べたように、求められるものの大きく違う二つの「アイドル」をひとつにまとめようなどと、思いつくだけでもあれなのに、よく実行しようと思ったものだ。

しかも既に収録は始まっている!

どうして「PRODUCE 48」なのか?

韓国側にとっては、日本におけるKPOP人気の更なる拡大を目指したということは容易に想像できる。そして今回は特に、AKBと組むことで日本の男性ファンに対して訴求できると考えたのではないか。

現状日本のKPOP人気は女性に支えられている面が大きく、男性ファンの盛り上がりは落ち着いている。そこを何とかしようと考えるのは自然だ。そして日本でアイドルに関心のある男性の多くを惹きつけているのはAKBグループである。

問題は日本サイドにとってのメリットだ。

AKBグループも近年海外進出に熱心なことは良く知られている。インドネシアやフィリピン・中国などアジア各地に48のシステムを輸出している。そしてこれらはいずれも巨大な人口を抱える文化圏である。

しかし今回の「PRODUCE 48」、そうした従来の広がり方とは大きく性質が異なる。

まず行き先が二大アイドル大国のひとつ・韓国だという点。世界に名の通ったアイドルが多数ひしめき、目の肥えたファンが多く存在するという特徴は、上記のどの地域とも異なる。

そして何より大事な点は、そんな環境へ日本のアイドル本人が大挙して乗り込むというところだ。今回は48システムという知的財産だけを輸出するわけではない。

KPOPの世界的な盛り上がりにも関わらず、韓国のアイドル市場が意外に小さいことは有名だ。一説には日本の十分の一以下だとも言われている。

純粋な市場としては敢えて選ぶ場所ではない。では何故韓国かといえば、それは世界に冠たるKPOPの中心地、その巨大な影響力に期待したということではないだろうか。

ヨーロッパや南北アメリカそして中東にまで及ぶその人気の規模は、肥沃な国内市場だけを相手にしてきた日本のアイドル業界とは根本的に違う。

うまくいけば日本のアイドルというものを、KPOPの勢いを借りて世界へアピールできるかもしれない。そう考えたとしても不思議はない。

以上はビジネス面からの考察だが、もうひとつ考えたいのはアイドル本人の動機だ。

デビュー前の練習生が中心になるとみられている韓国側参加者は純粋に知名度を得るという動機は分かりやすい。しかしここでも引っかかるのは日本側の事情だった。

私は日本のアイドル事情に疎いので、成功した日本のアイドルがなぜ今更こんな挑戦をするのかが分からなかった。そんなときに示唆を受けたのが以下の記事だ。

 AKB48が「PRODUCE48」に参加したい理由とは?…指原莉乃も言及“韓国ではすごい番組” - ENTERTAINMENT - 韓流・韓国芸能ニュースはKstyle

つまり、AKBグループのアイドルの中には日本での現状に満足していない人が多いということらしい。

併せて最近ではAKBグループの人気が落ち着いてしまい、同系統のグループである「坂道系」と呼ばれる「乃木坂46」や「欅坂46」に地位を脅かされているという事情もあるようだ。確かに個人的にも後者の名前はよく目にするが、イニシャルのグループ名は一時期ほどではない。

言い換えれば日本側のアイドルにも「PRODUCE 48」参加の動機は十分ということである。

不安と懸念、そして期待

「PRODUCE 48」発表以来、純粋な期待よりも戸惑いの声のほうが多く聞かれる。そうした心配の最も大きいものはアイドルとしてのスキルの差だ。

歌とダンス。これはどう庇おうとも韓国側参加者が優れていることに間違いない。そしてその差は番組収録期間に縮められるようなものではないだろう。

KPOPアイドルとしての高い要求に果たして日本のアイドルは応えることが出来るのだろうか。もしかすると、技術的な要求を下げるという製作サイドの判断がないとは言い切れない。しかしそんなことをすれば、視聴者に背を向けられて番組が破綻するどころか、参加者全員に深い傷を残すのは間違いない。

エムネットが関わる以上、WANNAONEやI.O.Iに匹敵するクオリティを完成させなくてはならない。一体どういう手腕が振るわれれば「PRODUCE 48」でそうしたことが可能になるのか。私の乏しい想像力では見通せない。

I.O.Iの時に「成長型アイドル」というべき存在がいたことは番組の展開を予測する上で参考になるかもしれない。I.O.Iメンバーの一人であるキム・ソヘさんは、もともと女優志望で、歌やダンスは不得意だった。しかし番組を通して素晴らしい熱意と成長を見せてファンの支持を集め、最後には見事合格を勝ち取った。

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もちろん、日本側参加者が技術面で劣るというのは一般論に過ぎない。もしかするとまだ本当の姿を見せていないメンバーがいるのかもしれない。意外な驚きが待っている可能性は十分にある。

そして何よりアイドルという人達は、この世界を選んだ以上、どんなに可憐な外見をしていても人並み外れた度胸や覚悟、そして努力への意思を持っているもの。日本で喝采を受けるアイドルとしての意地が見たい。

 

懸念の二つ目は日韓メンバーのチームワーク。

言葉も、国籍も、年も違うメンバーが競い合いながらも協力して行かねばならないという超絶難度の総合コミュニケーション力を求められる。これは自分のようなインサイドの住人からするとオリンピック体操選手の絶技に匹敵する困難に見える。

さらに、日本側参加者は既に現役のアイドルだが、韓国側は練習生がほとんどという現状の差が、お互いのモチベーションに微妙な違いをもたらさないだろうか。

日韓混合グループといえば誰しもTWICEを思い浮かべるだろう。しかしその条件は大きく違う。TWICEの日本人ミナ・サナ・モモの三名は韓国人練習生の間に混じり数年に渡る訓練期間を経てようやくデビューした。

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「PRODUCE101」シリーズはシーズン1・2共に放送期間は2ヶ月あまりで放送回数は11回。今回は初放送が6月と発表されているので、「PRODUCE 48」も同じボリュームだと考えると、おそらく夏の終わり頃にはグループとしてデビューしていると思われる。

つまり、ここまで長々と述べてきたような不安材料を抱えていながら、4ヶ月ほどしか準備期間がない。これは短すぎる。

おそらくだが、このグループが本当の意味で完成するとすれば、それはデビューした後のことになるのだろう。先頃発表された2年6ヶ月という、I.O.IよりもWANNAONEよりも長い活動期間には、元のグループとの兼務が可能という理由の他に、そうした見通しも含まれているように思う。

 

そして懸念の三つ目、それは「悪魔の編集」。

「PRODUCE 48」はサバイバルオーディションという名のテレビ番組である。

誰の・何を・どのように撮るか、撮らないのか。どういう状況を設定するか。撮影した映像をどう切り貼りするか。そこにどういう字幕をつけるか。

こうしたことを決めるのは製作者側である。「編集」という権力を握り、場合によっては参加者に対する視聴者のイメージを決定付けることができる。それはそのまま最終メンバー決定のための投票行動へ影響を与える。

通常は常識の範囲で用いられるその編集行為が、サバイバル番組を盛り上げるための演出目的で、実際に起こっていたこととは別の意味で伝わるような編集を加え、特定の参加者に否定的な印象を与えてしまうという出来事が過去に何回か起こっている。

韓国の視聴者はこの一連の行為を、批判を込めて「悪魔の編集」と呼ぶ。

製作者サイドもそうした批判に配慮するようなコメントを出していて、あからさまに無理な演出などは減っているらしい。

しかし、それでも編集行為が参加者の印象を決定付けるという本質は変わらない。

ここで私が一番懸念しているのは、今回は日本のアイドルがそうした編集の対象になるということだ。

既に多くのファンを抱えているトップアイドルが、サバイバルを通してどのような姿を見せるのか、具体的に言うと「どんな姿を選んで」放送されかについて、日本にいるAKBファンは大きな関心を寄せるだろう。

つまり韓国の番組サイドは日本にいる巨大なAKBのファン層を気にしながら番組を作らなければならないということになる。これまでの「PRODUCE」シリーズにはない条件が加わったわけだ。

さらに言えば、これはAKBのブランドイメージに影響を与えうるということでもある。そう考えるとAKBサイドが番組の内容に意見を出すということもあるかもしれない。

もしそうなると、日本のアイドルについては無難な姿ばかりを選んで放送されるような事にならないだろうか。例えば、間違っても有名なアイドルが靴のかかとを踏まれて舌打ちしているようなシーンは映せないだろうし、韓国の練習生からキムチを強要されているところなど放送されたら国際問題になりかねない。

上に書いたようなことは行き過ぎた懸念かもしれないが、番組側に難しいさじ加減が求められているのは間違いない。 

最後に

どうして今、「PRODUCE 48」なのだろうと考えた。なぜ今になって日本と韓国のアイドルが向き合うことになったのだろうかと。

それは主に韓国アイドル界の目まぐるしい進歩と変化のためではないか。

韓国のアイドル、特にガールズグループの歴史はまだ新しい。90年代後半にやっとアイドル第一世代と呼ばれる存在が現れたばかりである。

その当時、スパイスガールズ(英国)・TLC(アメリカ)・そしてお隣日本のSPEEDなどを意識しながら始まったという韓国のガールズアイドルの世界。

その後、あの少女時代に代表されるように、いわゆる日本型アイドルとは異なる方向へ進んで大成功を収めるに至った。そこに可憐な可愛らしさを読み取るのは難しかった。

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しかし最近になって、KPOPの世界的な隆盛は多様なアイドル表現を可能にし始めた。

そしてようやく、あくまで実力本位というKPOPの王道を守りながらも、制服姿に清純さを象徴させるような、いわゆる日本的なアイドル表現が珍しく無くなってきた。

20年の時を経て、ようやくアイドルの世界において日韓が重なり合う時が来たと言えるのかも知れない。

 

TWICEの大ヒットはKPOP新時代を強く印象付けた。だがもしかすると「PRODUCE 48」、この前代未聞のプログラムもまた、大きな意味を持っているのかもしれない。

そしてなにより、私はただ単純に「PRODUCE 48」が楽しみで仕方がない。