猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

猫から見た「TWICE」

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私がTWICEに関して一番好きなのは、その結成にかかわるストーリーです。そこにはアイドルビジネスという名の奔流の最先端で臨機応変に振舞い、日韓にまたがるポップアイコンを生み出して見せたJYPの手腕と、それ以上に運命的な展開があります。

大手事務所のグループ結成のイメージといえば、大勢いる練習生の中から精鋭を選び抜き、優秀な作曲家陣に用意させた音楽を組み合わせて、準備万端デビューさせるというような流れを想像します。用意周到な計画の、当然の結果としてのデビューというイメージです。

しかしTWICEの場合はそんなイメージとは程遠い、かなりの紆余曲折を経たグループ結成であることは熱心なファンであれば知る事実です。以下のエピソードはわりと知られた話ですが、個人的に一度まとめておきたいと思いました。

 

そもそもTWICE結成の直接のきっかけはオーディション番組「SIXTEEN」。

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アイドルを目指す少女達が繰り広げる過酷な競争は大きな反響を呼び、一旦は脱落したモモさんの復活などのドラマを生んで、TWICEデビューの話題性に大きく貢献しました。

しかし、いわば仕組まれたドラマであるこの番組とは別に、TWICEは実際にかなり劇的な経緯を経て「SIXTEEN」放送にまで辿り着いた過去があります。

全ての始まりはその番組放送の一年前の、2014年。

先輩ガールズグループであるワンダーガールズの無理なアメリカ進出が失敗に終わり、事務所の経営が厳しい状況に陥る中、JYPは彼らにとって4年ぶりとなるガールズグループ「6MIX」をデビューさせる決断をします。

6の数字が意味するとおり6人いたメンバーの中には、後にTWICEとなるナヨン・ジョンヨン・ジヒョの三名も含まれていました。

メディア関係者に向けたショーケースまで開催したこのグループは、当然メンバーも決定し、デビュー曲も振り付けも揃い、あとはファンの前で大々的にお披露目が行われて、音楽番組に登場するだけという状況でした。つまりJYPの次代を担うグループがひとつ完全に出来上がっていた訳です。

しかしこの「6MIX」のデビューは失敗に終わります。

同じ年に起こった「セウォル号沈没事故」が韓国社会に大きな衝撃を与え、そこから広がった波紋は時の大統領失脚の遠因にもなり、めぐり巡ってJYPと6MIXの下にも届きました。社会全体が悲しみに包まれる中、とてもアイドルグループがデビューできる情勢ではないという判断が下され、デビューは見送られることになったのです。

そして詳しい事情は分かりませんが、タイミングを同じくして主要メンバーとされていた一人が事務所を去ることになり、 6MIXは5人に。

対応を迫られたJYPはここでひとつ大きな決断を下します。当時日本人練習生のひとりだったサナさんを補充メンバーとして6MIXに加えることにしたのです。つまりこの時点で6MIXを韓日合同のガールズグループとして再編成するという判断をしたことになります。

実はこの当時、6MIXのデビュー準備と並行して日本人練習生だけで構成されたアイドルグループが計画されていたことが知られています。サナさんはミナ・モモ両名とともにそのメンバーでした。

元々は韓国人だけのグループと日本人だけのグループという別々の存在だったものが、思わぬ状況の変化がJYPに計画の変更を迫った結果、韓日合同という大きな意味を持つグループが生まれることになったのでした。

おそらくTWICEの大きな特徴のひとつ「韓日両国のメンバーが在籍する」という部分は、この時にJYPの中で現実的なアイデアになったのではと想像します。

ところが、その新生6MIXもすぐに行き詰まります。理由はまたしてもメンバーの脱退でした。その影響を受けて、もうひとつの日本人グループの構想も自然に消滅。

しかしJYPはこの二回目の破綻の時期に前後して、オーディション番組によるグループデビューの形を考え始めていたといわれています。

そして2015年夏、JYPはMnetと組んで、韓国だけでなく日本・台湾・タイ出身の練習生にデビューをかけたサバイバルを戦わせる「SIXTEEN」を放送。そして生まれた韓日台のメンバーからなる9人組グループ「TWICE」のその後の大躍進は周知のとおりで、JYPの三大芸能事務所の一角としての地位を揺ぎ無いものにしたのでした。

 

こうした経緯を見ると誰もが思うことかもしれませんが、もし6MIXが無事にデビューしていたら、果たして現在のTWICEと並ぶ成功を収めることができていたのかどうか。

予期できない状況の変化と格闘し続けて、最終的には最高の結果に結びつけたJYPは凄いと思いますが、やはり成功というのは不思議な巡り合わせによるところも大きいんだなとも感じました。

ちなみに先頃JYPは2,3年以内の、日本人だけからなるグループのデビューを発表。一旦は潰えたかに見えたもうひとつのグループに関するプロジェクトも、数年の時を経て形になろうとしているようです。