猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

バラの花冠は女王の証。IZ*ONE「La Vie en Rose」

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抑制と高揚、淡白と芳醇、抱擁と平手打ち。

相対する感覚を自在に操ってみせるかのようなIZ*ONE「La Vie en Rose」は、KPopの最先端に狙いを定めた優れた楽曲と高度なダンスパフォーマンスがあるべき一点で火花を散らしたような、圧倒的なデビューだった。

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PRODUCE48を通して表現された、ある意味で過剰な感動と興奮そして結果生まれたIZ*ONEへ注がれる熱い視線。

あれから二ヶ月、そうしたファンの熱狂に対して「La Vie en Rose」は曲の始まりから驚くほどに落ち着いた、そっけないとすら思える音色で応えてみせた。

そこから聞き取れるのはアイドルらしく分かりやすい爽やかさでも感動でもない。聴く側には何が始まったのかという不意の戸惑いが生まれる。

そんな一瞬の隙を突くかのように、舞台中央に集合したIZ*ONEのメンバーが乱れのないダンスを一斉に繰り出す。音色が落ち着いている分、ステージでのフィジカルな動きにどうしても視線が集中し、有無を言わさず惹きつけられる。

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そこで表現されるのは12人という人数を円形に集めて表現される大輪のバラ。さらに、一つに見えたそのバラが二つ三つとステージの上で咲き誇り始める。この辺りで舞台に引き込まれている自分にようやく気付く。

そしてチェウォンのセンターをきっかけに音楽はようやく高揚に転じる。本田仁美・チェヨン・ヘウォンと繋いで、そしてウンビへと渡る。

このウンビ姐さんのパートで一気にステージが加速する。力強いボーカルとダンスが舞台を奮い立たせ、横いっぱいに広がったメンバーが波紋のような動きでそれに応えてみせる。

そのウンビのパワー溢れるボーカルをついで歌うのがメインボーカルであるチョ・ユリ。サビへと繋がる高音を華麗に歌い上げて見せる。続いて宮脇咲良が「La Vie en Rose」を呟き、そしていよいよアイズワンが最も見せるべき瞬間が訪れる。

アイズワンとは一体何なのか。何を以ってステージに立つのか。彼女達はどこへ向かうのか。それらが一度に明らかになる時間。

ここが圧巻だった。

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歌わない、という美しき裏切り。

あるのかこんな事が。

しばらく歌わず、敢えて自分達の振り付けをゆったりと見せ付ける。こちらの期待を全て見透かしたかのように時間と空間を操り、華麗に振り回す。

この余裕、あるいは気迫。これは美しく不遜な挑発だ。そしてこれが新人アイドルのデビューステージだという。

もはや自分が突き放されているのか胸倉を掴まれているのかも分からない。

そしてこのサビの間、舞台の中心に立ち観衆の視線を一身に集めながらも凄みさえ示して見せるチャン・ウォニョンさん(15)。

改めてこの人のスターアイドル性は計り知れない。

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そして曲はチェイェナの生意気ラップパートを挟んで中盤へと続いていくが、ここからはパートを変えただけではなく振り付けもフォーメーションも変化する。

波乱の来歴を持つダンスクィーン・チェヨンの迫力のダンスパートや、チェウォン「姫」が響かせる力強くそして美しいボーカル、そしてミンジュさんがセンターに立つ二度目のサビを迎え、いよいよステージは佳境へと辿り着く。

この頃までには、私はこの舞台が意味するものをおぼろげに予感し始めていた。

ここまで続いてきた緩急をつけて華やかなパフォーマンスと、安易な盛り上がりを自制して舞台を完全に操ろうとするかのような堂々たる12人の姿。

皆は1人を引き立て、1人はグループ全体のために献身する関係。目まぐるしく変化するフォーメーションと華麗な音楽の競演。余すところ無く表現された、KPopが持つ魅力の全体がこのステージにある。

12人が「La Vie en Rose」を口ずさみながら、ステージ一杯に広がってこちらへ堂々と歩き出したのを見て私は確信した。

これはデビューコンサートの名前を借りた、新たな女王の戴冠式だと。

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「La Vie en Rose」は新人という枠などとは関係なく素晴らしい出来であると同時に、IZ*ONEがKPopにおけるガールズグループの勢力図に大きな変更を迫る存在になりうることを、その記録的な反響の大きさと共に示したと思う。

彼女達は人気投票で選ばれた、ある意味最強の「寄せ集め」だ。だからこそあらゆるコンセプトに対応出来ることを皆が知っている。パワーセクシー系の「Rumor」にカワイイ系の「1000%」「O' My!」など、このデビューコンサートで披露された対照的なレパートリーからもそれは伝わる。

つまりどんな楽曲にも対応できるという事は、曲が優れていればいるだけ、それに応えて見せる潜在能力を持っているということ。そしてIZ*ONEを支える人々にはそれだけの曲を準備できる力があることをPRODUCE48の時から証明し続けている。

そんな彼女達が本作で真紅の衣装を身にまとった不遜な女王とも表せる姿を敢えて選んだことは、IZ*ONEと、そこに関わる全ての人達が目指す場所の高さを象徴していると感じた。

 

最後に日本勢について触れておきたいと思います。※興奮が落ち着いたので口調が変わります。

というか主に矢吹さんについて。

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今回のステージを見て、彼女の存在が意味するものが思っていたよりずっと大きいと感じました。

というのも、もし彼女がいなければこのステージで踊っているのが日韓合同のグループであると一見して判断するのは難しい。それくらい宮脇&本田の両名はKPopの舞台に馴染んでしまっていました。

これは身長差から来る視覚的特徴が、IZ*ONEに不釣合いな印象を残すということを意味するわけではありません。むしろ逆に、自称150cmの彼女の存在がIZ*ONEのアイデンティティーである日韓合同という面を最大限に証明していると感じました。

アンバランスに魅力を見出すというのは、日本のアイドル文化における強い特徴のひとつだと思います。何かが少し足りないとか、欠けているとか、そうしたものに愛着を感じる風潮が間違いなくある。

つまり矢吹さんという存在がIZ*ONE全体に丸みと親しみやすさを加えて、日本のアイドルファンにも馴染みのあるアイドルグループイメージをうまく作ってくれている。この事は日本国内での成功を見据えたときにとても大きな意味を持つと思います。

更に言えば現地での矢吹さん人気を見ていると、韓国国内での一般的なアイドルグループのイメージにまで影響を与える可能性も感じました。

あとポニテ好きとして本田さんにも触れておきます。

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上で書いたようにKPopのステージに馴染んでいた本田仁美さん。その躍動感をポニテが全て表現していて凄かった。まさに疾走する馬の尾そのもの。

かわいいとか綺麗とかだけではなく、ポニテってアイドルとしての戦闘モードを象徴する役割もあるんだなと気付かされました。かっこよかった。

 

2018年の年の瀬がもう間近に迫る今、KPopアイドルシーンに新しい風が吹き始めたのを感じます。こうした劇的な瞬間にリアルタイムで立ち会える喜びを感じていると、KPopを追いかけ始めて良かったなと改めて思います。

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