猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

KPopファンと4つの葛藤

ただ純粋にアイドルを応援していたい、幸せで夢のある世界観に浸っていたいと思うのがファンの素朴な気持ちだとしても、時としてスキャンダルを始めとする様々な障害が姿を現し、現実との戦いを強いてくる。そんな光景はこの界隈の日常だと思います。

しかもKPopアイドルを追いかけようとした場合、更にこの世界特有の難題が襲い掛かってきてファンの覚悟を試してきます。

我々の信仰を試すためにゴロゴロと坂の上から転がってくる巨石のような障害物に対しどう立ち向かうのか。無視とかあきらめとか達観とか人によってとる態度は色々だと思いますが、私はこうして岩を避けてる、という記事です。文字だけです。

 

歴史。

具体的には、例のバッジやTシャツなどで時々話題になる一件について。これについては前に書いたことがあるので簡単に繰り返します。

先の戦争で日本を含めた多くの国で大勢の人々が大変な被害を被る中で、女性という理由で特別な傷を受け、終戦後もその被害が明らかにされず、そして精神的な傷を癒す機会を与えらずにいつしか老境を迎えた女性達を支援しようという態度や行動は純粋に人道的なものだと思います。

なので自分の応援してるKPopアイドルがそのようなアクションを起こしたとしても、むしろ社会の一員としてアイドルの影響力を正しく行使しているなと感心するくらいで、日本人のファンとしてなにか動揺するようなことはありません。

これに関して思い出すのは、ちょっと前に日本で大きな地震が起きたとき、わざわざボランティアに駆けつけてくれたKpopアイドルがいたことです。こうした行動と上に挙げた態度とは、共に同じ心から出ているものだと私は思っています。

 

領土問題。

つまり島の話なんですが、これはナショナリズムが関わる以上、押すしかないボタンみたいなところがあるので、いわば公的な立場にある韓国のアイドルにとって「わが国の領土」以外の言葉は事実上あり得ない。だからファンの1人としては彼・彼女達の立場を理解してあげることは可能だと思います。

しかし一方で、現実として日本を相手にビジネスをしなければならない立場からしたら、内心はどうであっても明らかな態度を敢えて表に出してしまうと収拾がつかなくなってしまうのも一目瞭然。

というわけでKPop界隈の人々は普段から特にそうした点にかなり注意して距離をとっているのでしょう、上の話題ほど表ざたになるケースは多くないようです。

でもだからこそ、私はこの話題に関して特に記憶している光景があります。

確かおととしくらいの出来事。とあるグループのMV撮影現場を映したよくあるビハインド映像の中で、あるメンバーが無邪気にも新曲の音に合わせてあの島の名前を口ずさんでふざけてしまうという場面が放送されてしまいました。

近い将来日本デビューを視野に入れるKpopアイドルとしては敢えてとるべき行動では無かったことは明らかです。しかしプロのアイドルとはいえ、やっと高校を卒業するくらいの年頃の相手に、こうしたことで完璧な振る舞いを求めるのは酷にも思えます。

あの出来事で責められるべきは映像を編集した上で放送する事を決めてしまったスタッフと、それをチェックし損ねた事務所の人々だったと思います。幸いにも大した騒ぎにはならず時は流れましたが、今後このようなわかりやすいつまづきは無い方向でお願いしたいです。

そしてもうひとつ、あの場面で思い出すことがあります。

それは上記のようにふざけるメンバーをちょうど隣で見ていたリーダーの、何ともいえない複雑な表情でした。

笑うでもなく責めるでもない、あの何とも言えない微妙な面持ちは、上で書いてきたようなことを全て理解していたのだと思います。

カメラの前ではしゃぐ末っ子はなにも間違った事はしていないので注意することも出来ない。けれどKPopアイドルという立場からすると、そうした行動は軽々しく取るべきではないという、言葉に出来ない苦渋が垣間見えました。

世間的に見るとまだ若く未熟な年齢でありながら、2つの国の狭間でとても微妙な立場に立たざるをえなかったKPopアイドルの現実の姿が、普段の楽しげで活発な光景とはとても対照的かつ印象的で、今でも記憶に残っています。

 

口パクと呼ばれるものについて。

「でもKPopアイドルって口パクでしょ」的な意見を時々耳にすることがありますが、結論から言うと私はそれでも構わないと思ってます。

厳しいトレーニングを受けていることで有名なKpopアイドル達なので、ほとんどの人たちがダンススキルだけでなくボーカル技術も水準以上のものを当然備えているはず。

にも関わらず現実のステージを「声を出している風」で行うのは、KPopの中心的な魅力である激しいダンスやフォーメーション、それに加えて表情演技との兼ね合いからくるものだと思っています。

これら三つの要素は言って見れば生歌とは相性が悪いもの。どんなに歌の上手な人でも激しく身体を動かす合間に音程を外さず声量を維持するのは至難の業でしょう。

それに表情演技に関して言えば、有名なボーカリストのステージを思い浮かべれば分かるように、上手に歌おうとしたら表情については諦めなければいけないところが出てきます。みんな眉間にしわよせたり、苦しそうに震えたり、大口開けたりして必死です。

こうした光景をアイドルのファンが本当に求めているとは思えません。

元々スキルのある人達ですから、生歌を維持しながらダンスパフォーマンスとのバランスをとることは可能かもしれない。

でもそうなった時にKPopの大きな魅力である激しいダンスや複雑なフォーメーションが後退せざるを得ないのは明らかで、それでは角を矯めて牛を殺すというもの。本末転倒だと思います。

歌唱力について抜群の評価を誇るBoAさんが以前、「昔は口パクなんて責められずに、ステージで思い切り踊っていることが許されたのに」的なことを、懐かしげに語っているインタビューをどこかで読んだ覚えがあります。

私も好きなアイドルがステージで心置きなく躍動している姿が見たいので、もし生歌にこだわる事が足を引っ張るなら、別にそれでなくても良いと思ってます。

整形。

そもそも、その是非を本人以外がどうこう言える性格のものなのか、という基本的な疑問がありますし、一方で現実的なファンの態度としては「なんか垢抜けたな」くらいに思える程度であれば、わだかまりなくこれまで通り応援できるという気持ちがあります。

ただこの件に関して私が強く感じるのは、普通の人にとっても簡単ではない選択なのに、一般人でなくアイドルを目指す人がそうした決断をすることの覚悟の大きさです。

いまどき学生時代の卒業写真くらい探ればネットに簡単に出てきます。多少面影が変わって見えたら即座にやかましくあれこれ言われてしまうのは目に見えている。

それでもなお、世間から向けられるそうした好奇の視線に向き合いながらアイドルとしての成功を目指して努力するという決意は、誰にでも出来るものではないと思います。

かといってこうした決断を手放しで称賛するつもりなど無いし、自分の身近な人だったら自分がどう反応するかはまた別の話です。

しかし少なくともこれは彼・彼女達が簡単に美を手に入れたというような話ではなく、まして小馬鹿できることでもないと感じています。アイドルとして身を立てるための覚悟の現れの一つとして、ファンの1人としては受け止めようと思います。

 

ふつうにアイドルを応援していたいだけなのに、どうしてこんなに色々考えなければいけないのか。ひょっとして考えなくてもいいのかもしれない。楽しい可愛いで済ませてしまうほうが賢い選択なのかもしれない。

でもこういう部分を適当に流してしまうのは自分の好きなものを蔑ろにしているような違和感を感じるし、色々あっても自分がKPopを好きでいられる理由を、まず何より自分に対して言葉で説明できるようにしておきたいという気持ちもあります。

そして上のような事を書いてみた今では、こうした葛藤とその向こうにある明るく華やかなステージとの鮮やかな対照の中にも、KPopの大切な魅力が隠れているのかもしれない、などと感じています。