猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

韓国からNizi Projectを見ると

絶賛放送中のNizi Project、この間の日プみたいに何人か韓国籍の有望株も乗り込んでくるんじゃないかとひそかに期待してたんですが、JYPから練習生が参加したものの全員が日本人(日韓ハーフのアンユナさん含む)ということで、そういった展開は今回はないようです。

本当にKPopのシステムを日本に持ち込む試みだということがはっきりしたのですが、メンバー構成などにおける韓国的要素を重視してる人間としては、少しだけ物足りなさを感じました。

そんな時、ちょうど向こうのウェブでニジプロに関する興味深い記事を見つけて、その中で自分が感じたことについて関係する部分があったので、取り上げてみようと思いました。

entertain.naver.com

著者の大衆文化評論家であるイ・ムンウォンという方は、韓国はもちろん日本の古くからのアイドル事情にも詳しく、これまで日韓のアイドル事情を比較検討するような記事を多く書かれています。

以下で上の記事を抜粋しながら紹介しているんですが、カッコ内の部分は元記事の意訳を含んだ要約で、正確な引用ではないことをお断りしておきます。

さて、日本で始まったJYP×SONYミュージックのコラボであるニジプロに対して、韓国では懸念する意見があるそうです。

その理由は大きく二つ。

①KPopから日本への技術流出。

②KPopシステムを基にしているのに、完成したグループが日本のカルチャーとして評価されてしまうのではないかという不満。

でも著者は明確にこの二つの懸念を否定します。

まず②については簡単です。

 

「KPopはすでに世界においてブランドとして認められ、ビルボード1位にもなった音楽のサブジャンルなので、まさか間違えられるようなことはない」

 

ここは私もそう思います。JYPの存在を前面に出してKPopグループを結成するのだから、現在の世界的なKPopへの理解を思えばこの心配は思い過ごしでしょう。

でも、もしかするとこの懸念の背景には、これまで長いことアイドル大国もしくは大衆文化先進国としての日本が作り上げてきた影響力に対する警戒心があるのかもしれません。

そして①の技術流出について。ここは詳しく反論しています。

 

「KPopシステムは全てオープンなものであり、そもそも秘密のノウハウなど無い。半導体技術のようなものとは事情が違う。

それにコラボが技術流出に繋がるというのなら、既に中国とは7~8年前からコラボを行っているが、中国のアイドルはKPopグループのようにはなっていない。

そこには創作面の不自由という中国に特有の事情がある。そして日本にも別の事情がある。

日本の大衆音楽市場は韓国とは比べ物にならないほど多様で活発であり、その気になればKPop式アプローチを採用できる。そうしないのは動機がないからである。

日本はアイドルとアーティストの領域がはっきりと区別されていて、アイドルはその非専門性ゆえに愛されている。

そして日本におけるKpopはちょうどその境界に位置している。

メインの市場を押さえている日本の大型芸能事務所が、わざわざこの比較的小規模な境界産業のために費用と努力を用いる理由がない。

つまり①②の懸念は具体的な根拠に基づくというより、日本に対する感情的なものが原因であるとみるべき。過去中国とのコラボでは特に反応がなかったのにIZONEとニジプロに対してだけ議論が大きくなるのが証拠だ」

 

とても論理的に技術流出への懸念を退けています。

①と②の懸念はこれですっぱり否定されたわけですが、 ここからニジプロに対する著者なりの分析が続きます。むしろ以下が本記事の要点のようです。

 

「『韓国』という言葉がある種のブランドとなった今、そこに対する興味関心を背景に、韓国と日本という異文化のタッグを武器としたTWICEやIZONEと違い、『韓国』が消えてKPopの方法論だけが残ったニジプロは、これまでの成功の秘訣を自ら消してしまったことになる。

それでもKPopシステムを日本で展開しようとするのは、比較的KPopが浸透していない日本の男性層を取り込むという最終的な意図があると思われる。

日本の男性ファンがアイドルに対して重視する疑似恋愛関係を成立させるためには言葉が不自由なく通じることが重要なので、日本人からなるKPopグループを作ることには意味がある。

しかし、疑似恋愛の対象としてアイドルを消費する傾向の強い日本の男性ファン層は、単純な歌と下手なパフォーマンスを通して保護本能を感じ、それが消費行動につながっているが、これはKPopの路線とは根本的に衝突するものである。

つまりニジプロに関する本当の不安要素は、新しい市場を開拓できるかどうかという話であり、それは一企業にとってのリスクに関わるもので、KPop業界全体もしくは韓国という大きな単位で何かが脅かされるような話ではない。

そしてもしニジプロが成功できれば、KPopは新しい局面を迎えることになる」

 

日本のアイドルシーンにおける男性ファン層への分析が冷静かつ率直すぎて面白いのですが、一方でニジプロのような試みは最終的に彼らの取り込みを目指しているのだという分析に関しては、まだよく分かりません。

個人的には、日韓合同グループであると同時にファンの保護本能など必要としない王道KPopアイドルであるTWICEが、日本デビュー以来女子のみならず男性ファンまでも順調に増やしてきた実績を考えると、男子の側で変化の兆しが既に始まっているのではとも感じます。

ひとつ確かなのは、本文中にもあるように、アイドルに対する疑似恋愛という要素を重視する日本的なアプローチはKPopの魅力と矛盾するし、日本のKPopファン層の主流である女子層からの反応を考えると、そのような方法はこれからも採りようがないはずだということでしょうか。 

 

ではJYPが日韓合同という成功の方程式から距離をとってまでニジプロで目指すものは、ということについて自分なりに考えてみると、よりスムーズなビジネスのためではないかという普通過ぎる考えに至りました。

日本語という言語がグループ全体で完全に通じることから来る親しみやすさはファンの性別を問わず武器になるはずで、さらにKPopの主要な市場である日本に特化しているので、ライブやメディア出演などアイドルビジネスの効率が全体的に上がると思われます。

さらにJYPはTWICEにおいて国籍を巡って痛い目を見ているので、日本という一国に特化したグループならば国家間の色々な摩擦を理由としたリスクから解放されるという点もメリットかもしれません。

一方の、韓国×日本という組み合わせから生まれる魅力を外すことによるデメリットの影響は未だ未知数ですが、そこはJYPが主導するのだからおかしなことにはならないだろうと楽観しています。

ちなみに実際の放送を見てみると、パクジニョンが好印象を隠さない日本人参加者には、韓国的美意識を思わせる楚々とした美貌の持ち主が少なからずいて、こういう「システムだけ」と綺麗に割り切れない現実は面白いなと思いました。