いつも午後6時過ぎ、公開のタイミングに合わせて好きなKPopアイドルのMVの再生ボタンを押すときは多少の緊張がある。
もちろん期待はしているけど、あんまり良くなかったら、どうでもいい感じだったら、とか後ろ向きなことを想像してしまい、もしそうだった時のブログとの関係まで考えてしまう。
実際に、耳には馴染むけど可も不可もなく、特に言うべきことが思いつかないというケースは多い。そんな時には無理に褒める事も出来ず、ブログとしてはスルーすることになる。
分かりやすく問題のあるクオリティの曲はKPopではほとんど記憶にないけれど、こういう場合はきっと批判も応援の内と思い、書いてしまうと思う。
もちろん一番望ましいのは、その素晴らしさに背中を押されて自然と画面に向かってしまうような舞台に出会うとき。
ブログを始めて3年、稀にそんな瞬間を体験する機会に恵まれた。飽き性の自分がここを続けていられるのは、この感覚を覚えてしまったせいかもしれない。
でもこの場合にも悩みはある。
聴けば分かる素晴らしさを敢えて言葉にしてしまうことのわざとらしさと、実際に聴いて何も感じなかった人には文章で説明しても分かってもらえるわけがないという徒労感。
それでも今回ロケットパンチのステージを見た後で、気付けばこうして何か書いている。
「BOUNCY」を聴き始めた瞬間は戸惑った。
高らかなホーンの響きに短いかすれ声という意外な幕開けで始まった曲は、こちらの適当な予想を完全に裏切り、不穏なビートに載せていきなり6人全員が英語詞のラップを繰り返す。
何が始まったのか分からない。
前作では大人しく収まっていた「期待の新人」という可愛らしいフレームが通用しない。
どんな曲を聴かされているのか自覚できない戸惑いをよそに、目の前ではロケパンの6人がただただ躍動している。それだけは分かる。
瞬く間に3分30秒が終わり、6名がポーズを決める。具体的にどう表現すればいいのか分からないが、特別な何かを体験した感触は残る。
呆気にとられた思いで何度か視聴を繰り返すうちに、やがておぼろげな感触が実感に変わる。
この舞台には特別な何かがある。そしてこの感覚には覚えがある。
OH MY GIRL「CLOSER」やfromis-9「LOVE BOMB」そしてIZONE「 La Vie en Rose」。
音楽とダンスとフォーメーションそしてメンバーの個性が合致した時に生まれる特別な景色。それに出会った時の感触。Kpopの世界だけで出会うこの瞬間があるからこそ、ブログまで始め、こうして続けていられる。
しかし稀に出会えるこの強烈で幸福な時は、やがて慣れへと変わり、大人しく記憶の棚に収まってしまう。自分とKPopを繋いでいるこの感覚に、次はいつ出会えるという保証はない。
仕事などでKPopと関わっているわけではない、自分のように飽きやすく気ままな人間にとって、純粋な音楽的魅力やアイドル個人の可愛さだけではこの界隈に留まる理由として十分ではない。他の何とも代替できない特別な瞬間がどうしても必要になる。
そして今、2018年秋の「La Vie en Rose」以来遠ざかっていたその感覚が再び蘇った。Rocket Punchによって。
これでまだKPopを追える。
クラッシュ系と呼ばれる特徴を備えながらも前作から繋ぐ可愛らしさや繊細さを織り交ぜつつ、ロケットパンチだけの舞台を表現して走り抜ける3分26秒は圧巻。
私たちはやりたいことをやりたいようにやるからと、自由奔放に、一心に、堂々と幸せだけを追いかけるように歌う姿はとにかく清々しく、勇敢。
「I wanna hit the world with rocket punch.」
デビューしてまだ半年にも拘わらず、彼女達が繰り返すこの歌詞は、舞台の素晴らしさに裏打ちされてこの上ない真実味を帯びている。
そんな「BOUNCY」の作曲&編曲の中心となるのはCODE9という男性二人組。
ロケパンとは前作「PINK PUNCH」でも「LUCID DREAM」と「Do Somthing 」で関わっていて、先輩であるGolden Childのアルバムにも複数曲で参加。 現在カムバ中のペンタゴン初のフルアルバムにも加わっている気鋭のプロデュースチーム。
そして楽曲と共に「BOUNCY」の舞台を特別なものにしているのが、印象的な振り付けの数々。
「オケ、ムル、パル!」の溌溂としたダンスや「bouncy~」の不敵な動きを手掛けたのは有名なダンススタジオ1million。
目を奪われるという表現がぴたりとくる「BOUNCY」のステージは、アイドルの個性と音楽、そしてダンスが互いにその魅力を増幅しあうのがKpopの醍醐味だということを改めて感じさせてくれた。
新人らしく溌溂としたデビュー作を聴いた時からもちろん将来を期待してはいたけれど、わずか半年でこれだけの勇姿を見ることになるとは予想してなかった。
ジャンルは何かと聞かれればクラッシュ系ということになるはずだけど、そこはRocket Punchだと答えたい。「BOUNCY」はそんな曲だと思う。
こんな感じで記事を書き終わろうとする頃、ついにIZONEの「Fiesta」が公開されてWIZONE界隈は喜びに沸き、当然自分もその一人でした。
しかし今回、ロケットパンチ「BOUNCY」を聴いてしまったことで小さな懸念の生まれたことを感じています。
よく知られているように、この二つのグループは共にプデュ48に共演していたメンバーがいるだけでなく、将来的にメンバーの移動があると予想されている関係でもあります。
つまり、IZONEの中でウリムエンタ所属のメンバーが、そのうちロケットパンチに合流するかもしれないということ。
この記事で賞賛してきたように「BOUNCY」の舞台はもう完全なものだと、私は感じました。そしてこれからカムバを繰り返すことで、ロケパンはグループとしてその輪郭をさらにはっきりさせ、これまで以上に6名の世界を作り上げるはず。
現段階で完成したと思われる名画に後から人物を書き足すことがどういう結果になるのか、今から想像することはとても難しいけれど、いかにIZONEで人気を得たメンバーが合流したとして、単純に足し算になるとは思えません。
そんな事を考えていると、改めてプデュ48が落とした影の長さを感じます。
あの番組はIZONEを生み出したという最大の功績がある一方で、数々の問題点が指摘されたことは周知のとおり。そして今なお、独自の道を走り出したロケットパンチの将来に対して不安定な影響を及ぼしている。
思えばプデュはこうした問題を常にはらんできました。
似たような難題をクリアしたグループの事情を思い起こすと、男子で言えばNUESTは元々いたグループへの再合流、AB6IXは前身となるユニットを解散させて新グループを作り、一から再スタート。
こうしてみると肝心な条件はロケパンと異なっています。
やはり一番近いのは宇宙少女・ヨンジョンさんの例だと思いますが、彼女の場合はI.O.Iの一年にも満たない活動期間と、宇宙少女二枚目のアルバムから早くも参加というタイムラグの短さがスムーズな合流に寄与したと思います。
しかしIZONEは二年半というキャリアを持つほぼ完全に独立したグループ。ここからのメンバー移動は合流ではなく「移籍」と表現した方が近い気もする。
ただその一方で、ウリムとロケットパンチはこのような懸念を見越して既に布石を打ち始めているのではという気配も感じます。
例えば、下の写真は「BOUNCY」の舞台終盤における一場面。
一人だけ腰を落としたユンギョンさんの左隣り、いくぶん不自然に空けられたスペースのせいで左右対称の形が崩れている。ちょっとした工夫でこのような違和感は解消できるはずなのに。
全編通して完成度の高いステージの中で、明らかにこの場面は浮いていると、私は感じた。なぜこの様な事をという疑問と同時に、このフォーメーションが決まった時期についても興味が湧きます。
普通に考えると彼女たちが今作の準備をしていただろう時期と、IZONEが活動休止という不測の事態に陥り、その将来が危ぶまれていた時期は重なっているはず。
こうした条件からは色々な想像が生まれるけれど、私は、苦境に陥った仲間に対する何らかのメッセージだったのだと思うことにしています。
つまりロケットパンチはわざと余白を残しているのかもしれない。下の写真なども、そう考えると、とても意味深です。
もしこの先、噂される通りに話が進んだとしたら、一番不安となる要素は、やはり合流元と合流先の知名度の落差が原因となる様々な不協和音ではないかと推測します。
実際、I.O.I解散後にこのアンバランスを解決出来ず埋没してしまった女子グループは珍しくありません。
だからこそロケパンはシーンの先頭を走り続けないといけない。そして彼女達ならそれが十分に可能であると、「BOUNCY」を見た今なら、強く感じます。
念のために記しておくと、ここまで書いたことは現時点で何一つ明らかになっていない仮定の話です。今の所はあくまでもメンバーの所属事務所が同じであることから来る噂に過ぎない。
でも、たとえこの先に何があってもなくてもロケットパンチは既に特別なグループであり、これからも色々な姿で世界を驚かし続けることを期待したいと思います。