先日、なんとなく公園少女「BAZOOKA」の公式の解説を読んでいると「エレクトロポップ」というジャンル名を見つけたので調べてみたら、代表的なアーティストとしてダフトパンクが挙げられていて、おやと思いました。
ダフトパンクなら知ってる。
KPopでは新曲が出るたびに、メロンチャートのアルバム説明欄などで全体のコンセプトやクレジット含めた曲ごとの特徴などが公式的に説明されています。
でもそうした記述の中にある、具体的な音楽ジャンル名を挙げての解説部分は、これまでなんとなく読み流してきました。
というのも、KPopは音楽的にダンスミュージックの影響を強く受けているため、詳しくない自分にはハウスだの何だのといった慣れないジャンル名で曲の特徴を説明されても良く分からない。
しかも楽曲を音楽的要素の集まりとして眺めることにそれほど関心がなかったので、これまでは自然にスルーしてました。
しかし今回は知ってる名前だったということで、ダフトパンクを聴いた後、同じ耳で「BAZOOKA」を聴き直してみると、何度も聞いたはずの音の向こうからお馴染みのレトロ&フューチャーな響きが聞こえて来て、その感覚がとても新鮮でした。
なんで今まで気付かなかったんだろうという自分の耳への疑問と、気付いた面白さの両方で、楽曲が参考にした音楽ジャンルついての知識を持って聴いてみるのもありかなと思い直しました。
この記事はそのような視点から、公式の説明文にジャンルが明記されている曲を、IZONE中心にを聴き直してみたものです。
あくまで素人が空目空耳を駆使して書いたものなので、色々てきとうな箇所があるかもしれないことを最初にお断りしておきます。
ちなみに上に挙げたダフトパンクの曲は10年以上前のものですが、別に公園少女が懐古に走ったというわけではなく、こういう感じの曲は最近は「Nu Disco」とか呼ばれて形を微妙に変えながら続いているようです。
参考として2019年の11月リリースのデュア・リパ先輩。
- 「FIESTA」とFUTUREHOUSE
- 「ヴィオレッタ」とトロピカルハウス&フューチャーベース
- 「DREAMLIKE」とダンスホール&ムーンバートン
- GFRIEND「Crossroads」と90年代~JPOP&ROCK
「FIESTA」とFUTUREHOUSE
まずFUTUREHOUSEって何、ということで幾つか聴いて見たところ、ドロップでの規則正しい4つ打ちのビートに加えて、目立って響くホーンのような電子音の組み合わせが共通していたので、たぶんそれがこのジャンルの特徴のはず。
FIESTAはボーカルを聴かせるサビと、音だけで盛り上げるドロップの組み合わせでひとつの大きなサビを作ってるところが特徴だと思いますが、確かにそのドロップ部分にFUTUREHOUSEのスタイルと思われる要素が聞き取れます。
ドンドンドンドンという4つ打ちのビートと、鳴り響くサックスみたいな音の組み合わせ。参考にした曲の多くはドロップのメロディが電子音でしたが、FIESTAは楽器の生音で表現しているように聴こえます。
そして曲全体で見ると各所で印象的なブラスサウンドやキラキラ音などの華やかさを加えることで、要素の一つとしてFUTUREHOUSEを取り入れつつ、「女神コンセプト」と言われるIZONEの音を作っているように感じました。
「ヴィオレッタ」とトロピカルハウス&フューチャーベース
トロピカルハウスというのは、もちろんトロピカルな楽器を使用するダンス音楽ジャンルなのですが、そもそもの成り立ちとしてはヨーロッパにおけるフォークやアコースティック系の歌謡曲を、ダンスミュージックの手法で洗練させた音楽とのこと。
つまり乗れるリズムと同時に物悲しさを感じさせる音楽、という独特の魅力があるようです。
そのトロピカルハウスを象徴する曲として多くのサイトで挙げられていたのが、2015年の大ヒット曲「Lean On」。
こうしたジャンルとしての特徴を踏まえて、改めてヴィオレッタを聴いて見ると不思議な曲だなと思いました。
まずサビの部分で繰り返される「ピーピーピーピッピッピープー」っていうお馴染みの音色は、確かにトロピカルハウスの要素らしい。テンポこそ違うものの上記「Lean On」で使われている音ともよく似てます。
だからこそ「ヴィオレッタ」も全体に哀愁が感じられるのですが、同時にこの曲は焦燥感を感じさせるところもあり、更に低音もかなり強めです。
公式説明ではイントロ部分がフューチャーベース(はっきりしたシンセサウンドと疾走感が特徴)です、と明言してるんですが、全体的にもその影響を受けながら、一般的なトロピカルハウスとは違う結果を選んだように聴こえます。
個人的には「ヴィオレッタ」、IZONEのタイトル曲とはいえ馴染むまでに少し時間が掛かった覚えがあるんですが、こうして陰りを花で飾るような複雑な組み合わせに、その理由があったのかもしれません。
「DREAMLIKE」とダンスホール&ムーンバートン
ダンスホールとは、「ダンスホール・レゲエ」というジャマイカ生まれの音楽ジャンルのこと、らしいのですが、それ以上の事は良く分かりませんでした。
ただ、上に挙げた「Lean On」の中にも要素として溶け込んでいると言われ、更にはトロピカルハウス自体がダンスホールの別名だとする意見も一部にはあるそうなので、つまり音楽的な傾向が似ているもの同士なんだと思われます。
そしてもう一方のムーンバートンと言えば、なんといってもKPopが一番得意にしているダンス音楽ジャンルの一つであり、BTS「血、汗、涙」にBLACKPINK「Playing With Fire」に、このスタイルを取り入れた楽曲は枚挙にいとまなしです。
更には上でトロピカルハウスの曲として挙げた「LEAN ON」を、ムーンバートンの代表曲として紹介する人もいます。
ということはつまり、大雑把に言えばこの「DREAMLIKE」も「ヴィオレッタ」と同じ系統の曲と言えるのかもしれない。
ドロップで響き渡る独特の高音と全体に流れる緩やかな旋律がいかにもムーンバートンなこの曲は、同じ音楽的要素を用いながらも「ヴィオレッタ」とは印象の大きく異なる結果になっている点が面白いと思いました。
ちなみに厳密な音楽ジャンルの話とは違うと思うんですが、この「DREAMLIKE」を聴いていると、往年の名曲と呼ばれて今なおカバーされ続ける「Don't Dream It's Over」を連想します。
いつ聴いても不思議な懐かしさを呼び起こす曲ですが、その感傷的なメロディにも拘わらず歌詞の内容は「世の中色々あるだろうけどへこたれんなよ」的な応援歌らしいです。
GFRIEND「Crossroads」と90年代~JPOP&ROCK
ここまで見てきたように、KPopは海外ダンスミュージックの要素を積極的に取り入れていますが、そもそもが誕生の頃からヒップホップやR&Bといった欧米の音楽の影響を強く受けて発展してきた音楽シーンでした。
そうした背景を踏まえると、GFRIENDが今年2月の「Crossroads」で披露した姿は、その個性が際立っているように見えます。
この曲に90~00年代日本アニメで使われていたポップ音楽の影響を指摘したのは、韓国のアイドル評論サイト「Idology」でした。
当時韓国においてケーブルテレビを通してJPOP&ROCK的要素の強いアニメソングに親しんできた世代の琴線に触れる感覚が、この「Crossroads」には表れている、というようなことが書かれています。
その音楽的特性を言葉で説明すると、それは頻繁に移り変わるコードと、ストリングスやバンドサウンドを用いて表現される、爽やかさと切なさを織り交ぜた繊細なポップソング。
このような特徴から「Idology」は、この曲へ影響を与えたはずの存在として、1999年リリース、作曲・菅野よう子、歌・坂本真綾の「プラチナ」を挙げています。
こうして見てくるとやはり「Crossroads」には、世界中の作曲家が共同で作り上げていくタイプのKPopとは違う、ある地域における、ある世代の感性が強く滲んでいるように思えてきます。
しかしその一方で、韓国内でトップクラスの存在感を持つ彼女達が、世界的に見るとそこまでの人気でもないのは、ひょっとするとこうした音楽的特色が関係しているのかもしれない。
それでも、電子的な音を駆使したダンスミュージックがシーン全体を席捲する今、GFRIENDはKPopの可能性と多様性を示しているように見えるのは確かです。
そして20年前に日本のアニメソングとして流れていた繊細なポップ音楽が、いまKPopという最先端の音楽シーンへと影響を残している光景は、ある音楽的な感覚が異なる時代・異なる場所でどのように受け継がれるのかを示しているようで、とても面白いと思いました。