猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

ふつうの新人グループに見るKPopの魅力

もうすぐ4月も終わりですが、2021年の今年はガールグループを巡って色々と大きな動きが予想されています。ビッヒ系の事務所からは複数のグループがデビュー予定との噂で、エムネは何事もなかったかのように新しいオーディション番組の放送を予定していて、更には「PRODUCE」シリーズの生みの親である名物PDが、今度は別の局と組んでプロジェクトを計画しているとのこと。そういえばYGにもブルピンの妹グループの気配があるとかないとか。

このようにデビューの前から大きな注目を集めるグループの存在は、いま勢いに乗るKPopアイドルシーンを象徴するものなのかもしれない。

でも個人的には、こうした華々しさから少し距離を置いたところを普通に走り始めた新人グループの姿にKPop特有の魅力を感じていて、この記事で触れるWeeeklyやSTAYCそしてPURPLE K!SSが、まさにそんなグループだと思います。

  

 Weeekly「After School」

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ガールクラッシュに代表される尖り気味のコンセプトが主流となっている最近のKPopグループのコンセプトのなかで、古典的なアイドルの美学をデビュー以来貫いているWeeeklyは、そのためにかえって独特の位置に立っているように見えます。

明るく爽やかな可愛らしさと、それを表現するためのハードワークが上手に組み合わさるステージは、アイドルの王道をKPopにおいて表現するとどうなるのかについての2021年現在の堂々とした基準になっているとも感じる。

一作目では椅子と机、二作目ではサイコロ風の箱、そして今作ではスケボーと、ステージ毎に見る人を楽しませようと、本来のダンスパフォーマンスへ更にひと工夫を加えてくる姿勢も素直な魅力があります。

最近のKPopグループには当たり前の外国籍メンバーはいないし、コンセプト的にも特に海外受けを狙うような派手さもない。飛びぬけて世間の注目を集めるようなグループではないけれど、それでもアイドルの王道をひた走るWeeeklyを好きになる人はこれからどんどん増えていくはず。

個人的にも今回の「After School」の、二番終わりから終盤にかけての美しい流れには、彼女たちが表現したい姿を見事に描きだした記憶に残る一幕になっていると感じ、Weeeklyというグループの存在を強く印象付けるものになりました。

 

STAYC「ASAP」

ウワハゲから始まるTWICEの大ヒット曲の数々を手掛けたブラックアイドピルスンの二人が代表を務める事務所、ハイアップエンターテイメントからデビューする初めてのグループということでそれなりに注目を集めていたSTAYC。

昨年秋の「So Bad」でのデビューを、メンバーのビジュアルと実力共々高い評価を受けつつ成功のうちに終えていたけれど、個人的にはあのデビュー曲の落ち着いた感じに不思議と距離を感じてしまい、残念ながら聞き流していました。

しかし今回の「ASAP」はずっと鮮やかにグループの魅力を伝える曲になっていて、一歩遅れてSTAYCが自分にも刺さることになりました。 

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理想の自分を気ままに求める「ASAP」も、前作同様に不思議な余裕を感じさせる。

でもこの、何かを過剰に足したり盛ったりして意気込んで見せるのではなく、力まず自然に颯爽として自分たちの魅力を伝える彼女たちの態度は、これがグループの見せたい姿だということを前作以上にはっきりさせているようで、その分だけ自分も惹かれたように思います。

すでに評価の高いメンバーのボーカルにしても、敢えてそれを誇示するようなことはなく、むしろコーラスがありそうな箇所でも歌わずに軽やかに踊って見せるだけ。そんな姿勢からは、既に自分たちの行くべき道は明らかで、今はそこを普通に歩いているだけなんだという気負いのない自信を感じさせます。

よくここまで揃えたという才色兼備のメンバー6人と、それに相応しい優れたプロデュース体制の合流したSTAYCは、その将来がただただ楽しみなグループです。

ちなみにこの会社、経営陣には上述の代表二人以外にも有名な歌手や元APINKのマネージャーなどが集まっているようで、この辺の顔ぶれは若い世代に牽引される今のKPopシーンの勢いを象徴する光景だなとも思いました。

 

PURPLE K!SS「Ponzona」

KPopグループのデビューに恒例のメンバー紹介ティーザーが始まったのが、たしか昨年の夏頃で、そこから二回のプレデビュー曲発表を挟むこと9か月、今年の3月15日にようやくの正式デビューを果たしたPURPLE K!SS。

初めから周到に準備された長めのスケジュールだったのか、それともコロナで混乱する社会状況に合わせての変更があったのか分からないけれど、その間、正直言って発売延期を繰り返すゲームの顛末を思わせてデビューの完成度を危ぶむ気持ちがありました。

けれども遂に披露された「Ponzona」(ポンゾーニャ。スペイン語で毒の意味)の舞台はそんな不安を吹き飛ばし、MAMAMOOを生んだ事務所・RBWの看板が伊達ではないことを証明するものでした。

 

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PURPLE K!SSが表現する陰りのある美と情熱の表現、こうしたものと似たことをやってる先輩グループを探すなら、多分(G)I-DLEになるのではないでしょうか。

あちらはリーダーであるソヨンさんを中心とした6名のはっきりした個性を独特の間合いでもって表現する姿にオリジナリティがあるのに対し、一方のPURPLE K!SSはKPopグループの王道に忠実なボーカル、フォーメーションダンス、そしてラップの役割分担をはっきりと表現してより分かりやすい雰囲気を感じます。

そしてボーカルラインの実力や、7人というバランスの良い人数から繰り出される力強い群舞だけでなく、このグループだけのアクセントになっているのが、ラップ担当の日本人メンバー・ユキ(毛利小雪)さんの存在。

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外国人メンバーながらデビュー曲の作詞を行うだけでなく、ラップまでも駆使するその流ちょうな韓国語はすでに高く評価されているようです。更には上の舞台映像でサムネに抜擢されている通りその美貌でも注目されていて、 デビューしたばかりのグループにあって、そのイメージ形成の重要な一端を担っているようにも見えます。

そんなPURPLE K!SSですが、やはりプデュ48を見ていた人間としてはデビュー前から「ナ・ゴウンさんのグループ」として認識していました。あの番組で最上級のボーカル評価を得た彼女の気品と迫力を兼ねた歌声が、新しいグループの中ではどう生かされるのか、ということについて興味や期待、少しの不安もあった。

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そんな中で届けられた「Ponzona」の舞台は、彼女の個性を見事に生かした紫色に象徴されるグループコンセプト、曲そして衣装等から、グループの理想についての明確な意図とそれを実現させるプロデュース能力の高さが感じられるもので、結果として納得とも感心とも言うべき感覚を抱くことになりました。

でも今回見てきたように、デビューという大事な瞬間に自分たちの表現すべき姿を周到な準備の末に実現して見せたのはPURPLE KISSだけでなく、STAYCにも、Weeeklyにも共通のものです。

私には、こうした優れた仕事が有名な大手からだけではなく、広く中堅や新興の事務所にまで見られるところにシーン全体の生態系としての豊かさのようなものが見えて、それが自分にとってのKPopの大事な魅力の一つになっていると、今回3組の活躍を見ながら改めて感じました。

 

あと最後に、PURPLE K!SSのナゴウンさんやパクジウンさん、更には遂にCUBEから「Lightsum」としてグループデビューが決まったハンチョウォンさんやキムナヨンさん、イユジョンさんに関連して。

PRODUCE48終了から二年半と少しが過ぎて、そこから生まれた大きな動きが一つの区切りを迎えようする今、ようやくアイドルとして正式にデビューすることになった彼女達の姿は、あの番組に出演した人達がその後に過ごした同じ時間の長さについて色々な感慨を呼び起こします。

今という時間はあの夏、あの場所で関わり合った人々にとって、不思議と何か特別の意味を持つような、そんな巡り合わせの時期なのかもしれない。それぞれに訪れた節目の時をどのような言葉で呼ぶにせよ、その前途が明るいものであればと思います。