KPopアイドルのカムバ日程がどんな理由で決められるのかよく知らないけど、5月から6月にかけては自分が推してるグループの新曲リリースが驚くほど重なっていて、まるで何かのイベント月間みたいだった。以下はそんな中から特に気になったグループ4組について触れた記事です。
Rocket Punch「Ring Ring」
グループの通算4作目となるタイトル曲「Ring Ring」は、デビュー以来溌溂としたコンセプトを続けてきたロケパンが、最近流行ってるらしいキラキラしたレトロサウンドを解釈して出した正解、みたいな完成度だった。おかげで従来のファンの規模を超えた反響を得ることが出来たようで、ようやくグループが周知され始めた気配を感じる。そして先日には順調に日本デビューも決定。
しかし舞台を離れたところでは少々落ち着かない雰囲気も生まれていた。IZONEでの活動を停止して会社に戻って来たチェウォン&ウンビがこの曲のPRに参加することで、二人の動向とロケパンの関係に改めて注目が集まることになり、更にはメンバーの高橋樹里さんが突然に一時離脱するという心配な出来事も。
IZONEとRocket Punch双方のファンにとって賛否あるだろう合流説に関しては、個人的にも色々思うところはある。でも結局は会社側がプロとしてそれぞれの将来性を考慮し、決断するべき種類の話なんだとは思う。ただ少なくとも、ロケパンが次のカムバの準備をするまでには決着をつけなければいけない話題だということだけは分かる。
公園少女「Like It Hot」
社名が新しくなったりプロデューサーが交代したり一年以上離脱してたメンバーのソソさんが復帰して7人体制に戻ったりと、色々と変化のタイミングを迎える中での5作目となった「Like It Hot」。それでも公園少女らしさには変わりがなかった。
これまで一部で高い評価を得ながらもそこまで大きな注目を集めるには至ってない公園少女は、例えば強烈なタッチで舞台を叩いて見せるEVERGLOWなどとは異なり、その繊細さが単なる筆圧の弱さと勘違いされる部分があるのかもしれない。
でもちょうど同じ5月にカムバしていた先輩・OH MY GIRLの姿は、そんな彼女たちが目標にするべき存在に思えた。強さや激しさ、あるいは海外からの反応も織り込んだ強烈なインパクトなどを売りにするのではなく、可愛らしく、曖昧で幻想的で、時に気難しくさえあったおまごるは自分たちのやり方を貫きながら今やガールグループのトップクラスに名前を連ねるほどになった。事務所こそ違っても同じ7人組で独自性のあるコンセプトという点において、私は公園少女とOH MY GIRLを少し重ねて見ている。
ただその一方では今回気になるところもあった。3年目というキャリアの割に再生数の伸び悩んでいるMVはあまり予算を感じさせない仕上がりだし、音楽番組のステージ衣装だって経費節減のためかバリエーションの少なさが見え隠れするなど、おそらく会社をめぐる状況が順調とは言い難い印象を受ける。
それでも今回のカムバでは音楽とダンスパフォーマンスの質というアイドルにとっての大事な一線は守って見せたところが何よりも重要だったし、いつも通りアルバム全体の出来も良かった。
aespa「Next Level」
東方神起からNCTに至る過程でどんどん人数の増えていくSMのボーイグループに対して、逆に減っていくのがSMのガールグループ。少女時代の9人から数えると今回のaespaで4人になってしまった。
SMはKPopの特徴の一つとされる多人数による群舞を、少なくとも女子においては必須のものとは見てないのかもしれない。そんなプロデュースの方向性は自分の趣向とは異なる。でも「Next Level」は文句なしに良かった。
曲の中盤で不意にテンポを変えてニンニンのボーカルにウィンターが続いて、更に残る二人のラップが繋がっていく展開は、近年のガールグループシーンの中でも特筆すべき一分間、自分には少し遅れて届いたaespaの強烈な名刺代わりにも思えた。
デビュー曲の「Black Mamba」も良かったけど、あの時はアバターを用いたコンセプトが既存のアイデアの存在を連想させ過ぎて、それがグループに対する正当な評価へのノイズになってたように思う。今回の「Next Level」でその世界観設定に大きな変化があったということではないけれど、そのぶん面白半分で先行者を真似したわけではないという意気込みや、この路線を継続することへの覚悟みたいなものが感じられた。
fromis-9「WE GO」
このあいだ久しぶりに「DKDK」の舞台映像を見たんだけど、まぁ可愛らしかった。最近のKpopでは珍しいくらい屈託のない可愛さが溢れていて、それが何かとても貴重なものにさえ思えた。
あれから約3年が経ったことを考えると、fromis-9が歌う「WE GO」の姿はひときわ印象的だった。コロナ禍で閉塞する時代に対するプロミなりの希望の歌にも聞こえ、またメンバーが過ごしてきた時間と変化を織り込んだ彼女たちの現在地を示しているようにも感じられた。
初々しい制服姿の9人で始まったグループも、いつしか全員大学生くらいの雰囲気になった。そんなメンバーを無理に可愛いコンセプトに縛り続けることなく、その当たり前の成長をアイドルの舞台として表現して見せた今回のプロデュースは、fromis-9が過ごしてきた時間の流れに寄り添った、とても誠実なものだったと思う。そしてリリース当時は特に強い印象を持てなかった前作「Feel Good」も、今ならfromis-9のキャリアの転換点にあった大事な曲だったと理解できる。
確かに以前の愛らしい姿も名残惜しくはある。でも「LOVE BOMB」というかわいいコンセプトの到達点みたいな曲で区切りはついたとも思えるし、それに「WE GO」を聞いた今では、キャリア中盤に差し掛かったfromis-9のこれからの展開を率直に楽しみにしている。
ちなみに可愛いばかりだった頃のプロミ。
TWICEやBLACKPINKが一時代を築いて久しい現在、世間では第4世代という呼び名のもとに新しい動きを期待する雰囲気がある。そして個人的にその最有力だったと信じるIZONEがキャリアの天辺で去ってしまったKPopガールグループシーンの中に、私は大きな空白のようなものを感じていた。
そんな今、コンセプトも規模も異なる様々なグループがタイミングを合わせたかのようにカムバを競ったこの5,6月は、だれか個別の存在がその隙間を埋めてくれることを期待しがちな自分にとって、多くの参加者による華やかな日常を楽しめるのがKPopシーンの魅力であると改めて気付かせてくれる良い機会になりました。