猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

黎明に広げる翼。PIXY「Addicted」

KPopについて喋りたいことがある時にこのブログを更新してきた。その中身は感想だったり批判だったりと様々だけど、でも自分が一番望んでいるのはKPopならではの素晴らしい舞台に触れたときに受ける感銘を言葉にすること。そんな機会は稀だったけど、元はと言えばそれをきっかけに始まった場所だったし、いつかまた訪れると思えるからこの場所を続けてる。

 

ALLARTエンタテイメント所属の6人組ガールグループ・PIXY。デビューした時からその名前を知ってはいた。デビュー曲「WINGS」のホラーな演出がわずかに目を惹いて、なんだか風変わりなグループが出て来たなという程度の印象は持ってた。

しかし2021年という年の大半を、KPopファンとしての自分はIZONE活動終了の衝撃とその余波の中で過ごしていた。PIXYがデビューした2月末と言えばまさにIZONEの行く末を見つめる緊張の真っ只中で、どこの誰とも分からない新人グループへ目配りしている余裕はなかった。

そんな自分とは関わりなく、PIXYはデビューの1年で2回もカムバするなど積極的に活動する。そのうち10月に発表されたミニアルバムが「Temptation」で、そのタイトル曲が「Addicted」だった。

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KPopを追いかけていると、自分でも気付いていなかった理想が突然目の前に現れるような錯覚を覚えることがある。暗くて美しく、悲しくて猛々しい。PIXYという美意識を音楽と6人の群舞で描いた「Addicted」はそのようにして自分の琴線に触れた。僅か3分でここまでのドラマを表現できることは映画やゲームといった他の映像的なエンタメジャンルとは異なるKPopの優位性の証明では、と思わせるほどだった。

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PIXYは影響された先輩としてDreamcatcherや(G)i-dleの名前を公言しているように、その特徴は一見して分かりやすい。そのダークな演出や危うく退廃的な美しさの追求は、おそらくDreamcatcherが一つのきっかけとなったKPopにおける「暗黒美」とでも言うべきコンセプトを引き継いでいる。

それでいて先輩達とも異なる表情を見せているのは確かで、メタル&ダークコンセプトのドゥケが持つ直線的な力強さの代わりに曲線的な表現を、(G)i-dleとはファンタジックでハードな群舞を得意にするという特徴ではっきり区別されている。何より6人が織りなす劇的なフォーメーションはPIXYと他者を分ける一番の特徴に見える。

先行者の影響を受けつつ新たな物語を始めたその姿は、模倣や参照が繰り返されることで次の表現が生まれてくるという文化の健全な循環としても眺められるように思う。そして「Addicted」だけではなく、デビュー曲の「WINGS」から「Let Me Know」そして「Bewitched」に至るまで、全ての舞台がグループコンセプトへの信頼と自信を示していて、明確な意図と熱意を持った人たちがPIXYの名の下に集っていることを感じさせる。

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PIXYに携わる人達は音楽を離れたところでも丁寧な仕事をしている。

たとえば初カムバの際には映画館を借り切ってのMV鑑賞会へ6人を招待して、そこで家族からのメッセージをサプライズ上映したり、カムバ活動が終わったらわざわざケーキを差し入れしてあげたり。舞台では人が吊り上げられたりエクソシストみたいにひっくり返ったり、悲鳴を上げたりなどしていることを思えば、こうした映像から垣間見えるメンバーへの視線は春の日差しのように暖かで、その落差がおかしい。

でも一番印象的なのは公式チャンネルで公開されているささやかなドキュメンタリーのようなメンバーの紹介映像。

PIXYには、あのCherryBulletを離れることになった人や、そのCBに入れずFNCを去った人、以前に所属していた事務所を去ったことでかつての仲間への負い目を心に残している人など、それぞれの過去を持つメンバーが集まっている。

そんな彼女達がここに至るまでの過去に触れながら、PIXYとしてのこれからへと歩き出す姿を収めた20分弱の映像は、対象への静かな愛情を感じさせて心に残る。そうした穏やかな視線を見ているこちら側も共有したいと思わせる。

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ここまで書いておきながら、実はまだPIXY「Addicted」を推すことに迷いがある。

というのも自分が持つPIXYへの高い評価と世間の反応の静けさとの対比は奇妙なほどで、それが自身の感覚への疑念を生んでる。2021年デビューのガールグループとして見ても、各種数字に現れる注目度という点でTRI.BEやLIGHTSUMなどと比べてかなりの差がある。

これだ、と思ったグループへ肩入れすることで強まった思い込みが、その対象への過大評価に繋がってしまうファン心理と言うものがあるはずで、個人的にもそうした態度には覚えがある。PIXYには今のところ数字の裏付けや一般的な盛り上がりが伴わないので、また独りで空騒ぎしているだけなのではという不安が残る。

それでもKPopを追いかけながらそれなりに色々と見聞きしてきたつもりはある。だから今回は自分が感じたものを信じてみようと思う。

ブログを初めて4年になる。あの当時OH MY GIRL「CLOSER」に心揺さぶられた瞬間を書くことから始まったこの場所で、またこうして素晴らしい舞台についての思いを綴ることが出来る幸運を感じている。