猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

Weeeklyについていく。「Ven para」

1年前の今頃に公開されたWeeekly「After School」の公式MV再生回数が1億2000万を超えてた。大手に所属しているわけでもない新人アイドルが記録した数字としては破格かもしれないけれど、「After School」はそれくらい反応があって良い曲だと思うので驚かない。

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なんてことないキャッチーなイントロからはじまり、ほんの3分の間で色鮮やかな感情を巡りながら終幕へと至る「After School」は、数多くのKPopアイドルが舞台で描いてきた青春の中にあって特筆すべき一曲。オレンジ色に燦然と輝くそれは眩しすぎて直視できない寂しささえ漂う。

楽しく爽やかなのにどこか切なさが見え隠れして心に残る、例えば楽しかった一日の終わりにふと眺めた夕陽が呼び起こす不思議な落胆を潜ませたような楽曲群はデビュー以来Weeeklyのアイデンティティで、それは彼女達を他の多くのグループとはっきり分ける印だった。

そんなWeeeklyが3月7日に発表した5作目となるタイトル曲「Ven para」が、一転していわゆるガルクラに分類されるような方向性だったことがファンを驚かせた。アルバムの初動販売数は8万枚のキャリア最高を記録し、MV再生数は早くも2000万回を超えてエムカの一位候補にも挙がった。数字の上では好調なのにもかかわらず動揺の声が聞かれる。

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※公式MVがフラッシュ演出多めで少し見辛い&ファッション含めこっちのが好きという理由でコレオ動画を載せてます。

デビュー曲「Tag me」から始まり「Zig Zag」と続いて「After school」で終わる「WE三部作」を通してWeeeklyが成し遂げたことを、かつてGFRIENDやTWICEがキャリア初期に名曲を連発してグループの在り方を確立して見せた姿に例えるのは大袈裟ではないと思う「Afterschool」MVの一億ビュー突破やこれまでに各種新人賞を獲得している事実はその見方を補強する。

なのにWeeeklyがどこか大人しい印象に留まっているのは、おそらくここ数年のKPopシーンを席巻するガルクラブームというべき時代の影響があるように思う。世が世ならもっと喝采を浴びていたかもしれない、そんな不遇とも呼べる状況にあってもWeeeklyが瑞々しい青春コンセプトで突っ走る姿は、だからこそ軽々しく流行におもねらない良心的な存在だとみなされてファンを中心に熱烈な支持を集めていた側面はあったように思う。でもそれが今回の変化に対する違和感を強めることにも繋がった。

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自分はと言えば、「Ven para」を見た時に二つの意味で戸惑った。上述のように方向性が変ったことに対する率直な驚きが一つ。ただもう一つは、印象を大きく変えて来たにもかかわらず、7名の姿が意外にもかなりの説得力を持っていると思えたことだった。

過剰な装飾や感傷的な旋律を抑制したリズム主体の音楽と、研ぎ澄まされてシャープな振り付けにキレのある動作の組み合わせ。お馴染みの親しみやすいコンセプトのせいで分かりにくくなっていたけれど、Weeeklyは現役ガールグループの中にあって一二を争うほどに長身メンバーが揃っているということを改めて気付かされる。彼女達の魅力を新たな解釈で引き出した今作は、ここまで隠していたポテンシャルを一気に爆発させたようでもあった。

特にマンデイ&ソウンの2名は「Ven para」という新しいコンセプトを特に生かしていたと思う。その鋭い美貌と、揃って170cmを超えるメインダンサーである二人が長身でもって描く躍動はまるで縛りを解かれた鳥の羽ばたきにも感じられた。

ちなみに2020年のデビュー直後に公開されたカバーダンスメドレーを見ると、すでに当時から可愛いだけには留まらないWeeeklyの可能性が示されていたように見える。

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10代後半のメンバーが中心になるアイドルグループが若さや可愛らしさを打ち出したコンセプトを取り入れた音楽でデビューするのは、年齢相応の適正や周囲の期待を考えれば王道だと言える。けれどやがてメンバーは成長するし観客も慣れる。どこかのタイミングで刷新されたイメージを打ち出す必要に迫られるのは、こうしたアイドルにとっての宿命になっている。

たとえばコンセプト変更に伴って起きた動揺として、かつて清純派として知られたGFRIENDが偶然にも今回のWeeeklyと同じ5作目となる「Fingertrip」で少々唐突な変身をしてファンを驚かせたことを思い出す。あの時はすぐ次回作から方向性を修正してファンの納得を得ながらその後のキャリアを成功へと繋げた。

でもWeeeklyの場合、公式が「Ven para」製作へと至る過程をいわゆるビハインド映像以上のクオリティで公開して、その中であらかじめファンの反応を意識しつつも変化への決意を表明しているように見えることが、今回の判断が適当な思いつきに基づくものではないことを教えている。

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2020年夏のデビュー以来、教室や放課後といった限られた時間と空間の中で歌われる物語を通して、この輝きが永遠には続かないと分かっているからこそ際立つ眩しさ、今という瞬間への慈しみの感情、そういうものをWeeeklyは表現してきた。机を並べ替えたり箱を転がしたりスケボーに乗ったりしながらも、いつかはここを離れる時が来ることを予感させながら。その意味で「After School」はWeeeklyにとって一つの時期を区切るのに相応しい曲だった。

それに改めて思うのは、「Ven para」にガルクラという定義の曖昧な言葉を当てはめるのは適当ではないのかもしれないということ。今回のカムバも7名の素質と能力に相応しいコンセプトを選んだという意味で「WE三部作」を通して示された基本的な態度と異なるところはないと思う。だから彼女達が今後どのような姿を見せてくれるのか、その可能性を大きく広げることになった今回のカムバを私は歓迎する。ちなみに「ven para aca」というスペイン語は「こっちに来て」の意味らしく、それなら自分はこれからもWeeeklyについていこうと思う。

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