猫から見たK-POP

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LE SSERAFIMの複雑な幕開け

BTS生みの親であるパン・シヒョクが直々にプロデュースを行うHYBE初の女性アイドル、しかもIZONE出身の宮脇咲良&キム・チェウォンが揃って合流するということで正式発表前から大きな注目を集めていたグループが「LE SSERAFIM(ルセラフィム)」として5月2日にデビューした。

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期待の大きさがそのまま数字となったようにデビューアルバム「FEARLESS」は30万枚以上の記録的な売り上げとなり、音源チャートにおいても順調に上昇を続けて今ではメロンチャートのトップ10に進入して音楽的な人気も証明している。

このようにルセラの大成功は数字で裏付けられている。にもかかわらず、個人的にはそのキャリアが意外にも混乱したスタートとなってしまった印象も強い。それにはコンセプトの齟齬と、一部メンバーのスキャンダルという二つの理由が挙げられると思ってる。

まず前者について言うとルセラは「IM FEARLESS」、私は恐れないという意味の英語を並べ替えたグループ名と共に登場したものの、ティーザーで披露されたテニスウェアやネグリジェのような露出の多い衣装がその勇敢なコンセプトとのミスマッチを感じさせた。

そのことについて率直に批判している韓国での記事は例えばこれ。

star.ohmynews.com

少し読みづらいところがある内容を自分なりにざっくり解釈すると、この記事ではルセラの「恐れない」というコンセプトは結局のところ流行のガールクラッシュの一種に過ぎないと言ってる。なのに収録曲「Sour Grape」ではよくある「恋を恐れる少女」となってその姿勢に一貫性がないとも。更にティーザーでのテニスウェア衣装や煽情的な振り付けが誘う性的な視線を正当化するためにルセラのガルクラは機能していると厳しい評価が述べられている。

たとえばアメリカにおいては女性アーティスト自身が露骨に性的なパフォーマンスを敢えて行うことで女性本位のメッセージを表現することがある。もしかしたらHYBEが念頭に置いていたのはそうした受け入れられ方だったのかもしれない。

しかしルセラがあくまでパン・シヒョクを始めとする男性陣主体のプロデュースであることや、アイドル個人と会社の指揮命令関係などを考えると、上記のように不用意なイメージの提示によって「IM FEARLESS」というコンセプトが疑われることはあり得ると個人的にも感じる。ただ「FEARLESS」の舞台でメンバーが見せている勇姿から目を逸らしがたいのも事実で、いずれにせよグループの真正性はこれからのキャリアを通して証明されるべきことなんだと思う。

 

ルセラのデビューに感じた混乱の二つの理由、それを最も象徴していたのは一部メンバーの過去に端を発したスキャンダルの方だった。

学生時代のトラブルについて詳細な経緯を把握しながら対応を怠ってデビューを強行した結果、活動途中で一時的に5人体制へと再編せざるを得なくなる事態を招いたHYBEの不手際は批判されても仕方がない。

一方で私がこの件に関して考えるのは、彼女がアイドルであろうとする限り甘受すべき批判や反応というのはあるとしても、一個人としての彼女が維持すべき平穏やプライバシーもまた守られなければならないということ。仮にアイドルとして何らかの責任を負うことになったとしても、その尊厳までも不当に害されるようなことは避けないといけない。

周囲の過剰な反応から彼女を守るために今後具体的にどう対処すべきかについて、HYBEの慎重な決断が期待されている。

 

 

LE SSERAFIMのデビューはひとまず大成功に終わった。しかし上記の経緯もあり、スタート早々に5人組として再編成するのかそれとも6人体制を維持するのかという難問に直面している。ファンの反応が二分している以上、これはどう対応しても異論の出る厳しい展開が予想され、それを思うと現状を手放しで賞賛する気分になれない。

だけど私はその将来を楽観してもいる。まだ一緒になってから日が浅い分だけお互いを気遣いながら活動しているメンバーの様子を見ていると、このグループの未来は明るいものだと思えてくる。見方を変えると優れたドラマに難しい葛藤は付き物で、それが主人公を特別にするということもできるかもしれない。LE SSERAFIMのキャリアは始まったばかり。まだ先は長い。