猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

あいが飛び交う。Red Velvet「WILDSIDE」

 

ちょっと前(3月28日)に発表されてたRed Velvetの日本オリジナル曲「WILDSIDE」にかなり強い印象を持ったんだけど、当時は界隈であまり話題にならなかったのが不思議だった。韓国でのカムバ曲「Feel My Rhythm」と一週間違いの公開だったせいかもしれない。それはともかく個人的には見過ごせない一曲だと感じたので、今更ながら感想を残しておきたい。

www.youtube.com

レドベル特有の上質な音楽表現が日本オリジナルの曲としても成立しているのは驚かないとして、この「WILDSIDE」を特別にしているのは音としての日本語との向き合い方にあったように思う。

サビの「見ていなさいWILDSIDE」を筆頭に、この曲は歌詞の語尾で「あい」の音を使って頻繁に韻を踏む、気の利いたつくりになってる。「STARLIGHT」「もう暗い」「夜を切り裂いて」「so bright」と畳みかけるところなども分かりやすい。続く「my  wildside」の次の「弱さを超えた」の「弱さ」が「your side」に聴こえてしまうのも意図的なものに思える。そして「あい」の音が「愛したい、信じていたい」という願望の意味で連続する所では、それまでの積み重ねがある分だけ歌詞が切迫感を持って伝わる。

こうした工夫だけではなく、「これまでのわたしじゃないの」の部分では日本語の母音の響きが妖艶な音楽の中で自然に強調されていて、この辺りにも「WILDSIDE」が持つ非凡さがあったように思う。キレの良い子音という特徴を持つ韓国語が生きるKPOPとはまた違う、母音に感情を込める日本語で歌われてこそのKPOPを聴けた気がする。

なにより「WILDSIDE」は全体として日本語がきれいに音楽と調和していて単純に聴きやすく、歌詞を音として追いかけるのが楽しい曲になっていた。

ちなみにこの曲の作詞家としてクレジットされているのはBOYHOOD(ナム・ドンヒョン)。WINNERを脱退したナム・テヒョンの弟で「PRODUCE X」にも出演歴があるとのこと。普通に韓国の人のようだけど、日本語との関わりについては良く分からない。

 

そんなRed Velvet「WILDSIDE」とほぼ同時期、わずか5日前に発表されていたITZYの日本オリジナル曲「Voltage」は意図的に日本語の違和感を残すことで互いに好対照になっていて面白かった。

www.youtube.com

日本語と英語が混じり合ってどこに飛んで行くか分からない感覚がITZYの個性と良く似合っていて、こちらはこちらでレドベルとは違う魅力が感じられた。JYPは音楽のリズムを重視して自然な発音にはこだわらないスタイルなのか、この特徴は日本のグループであるNiziUにおいても見受けられる。

ちなみに同じJYP所属のボーイグループであるStray Kidsが6月22日に発表した日本オリジナル曲「CIRCUS」はその方向性が顕著で、初めて聞いた時は途中まで日本語の曲だということに気付けなかった。

www.youtube.com

さいきん日本で活躍の目立つKPOPのクオリティに準拠したようなボーイグループも、ここでいう所のJYP的な方法をとっているように見える。つまり国内でさえ違和感を残した発音を音楽に載せることがクールなものと見なされている状況で、KPOPグループにもかかわらず日本語の自然な特徴を音楽の中で生かしてきたRed Velvetの存在感は余計に際立つ。

「WILDSIDE」は日本語でも妥協のないKPOPは可能だということをSMとRed Velvetが改めて証明したようでもあり、すこし話を広げるなら日本語で歌われるアイドルソングが何をどこまで表現できるのかについての一つの解答であるようにも思えた。