猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

日本のアイドル、国際競争力、XG

 

KPOPの世界的な人気が明らかになって以来、国内では48系のグループに代表されるアイドルへの批判が起こり、それに対しアイドル知識人により反論がなされるという光景が繰り返されるようになっている。

KPOPが絶好調だからといって別に日本のアイドル業界が苦境に陥っているというような話は聞かないので、こうしたやりとりの背景にはKPOPの国際的な受容、具体的に言えばポップミュージックの本拠であるアメリカにおいて韓国のアイドルが賞賛を浴びている事実があるんだと思う。同じアイドルという名前の下で音楽をやっているのに日韓の間に出来てしまったこの評価の差は何なのか、という思いが声を挙げさせている。

それに対して48系だけが日本のアイドルではないとか、そもそも巨大な内需を持つ日本のアイドルは韓国のように国際競争力を持つ必要が無かったのだといった反論は具体的ではあるけど、こうした批判者の感じている不満には応えられてないように見える。

 

ここでいうアイドルとはつまりビジネスの話でもある。そしてHYBEがBTSというただ一つのアイドルグループの成功によってたった10年で飛躍的な成長を遂げたことはビジネスとしてのアイドルの可能性を分かりやすく証明している。国際競争力や内需と言った話を別にしても、日本が得意としてきたはずのアイドルというジャンルで隣国がここまでの大躍進を見せた以上、それに対して国内から何らかの反応が生じるのは時間の問題だったと思う。

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先頃avexからデビューしたXGはそういう動きの中にいるように見える。デビュー曲「Tippy Toes」と続く「MASCARA」は抑制の効いた音楽の中にさりげなくもはっきりとXGの個性が刻印されていて、IVEやLE SERRAFIMといった最新のKPOP第4世代と同様の雰囲気を漂わせている。デビュー早々に海外から熱い注目を集めつつある彼女達の今後の成功を予想することは難しくない。

ただすごく個人的な意見ながら、これほど優れたグループでありながらXGの存在が日本からKPOPに対する決定的な回答になるのかどうかはまだ分からないと思ってる。

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聞くところによればXGはトレーニングや楽曲制作等においてプロデューサー以下韓国側製作陣の関与する部分がとても大きいようで、avexという名前の下にありながら実際はブランドとメーカーが別々のOEM的な性格が感じられる。

加えて国内の音楽業界を代表する企業であるavexが5年の準備期間を経てKPOPの背中を追うべく送り出したグループが、母国語の日本語ではない英語での活動を選んだという事実が話を複雑にしているとも思う。

英語曲での活動を選択すること自体は海外市場を考える上では合理的な判断だと思える。曲の作りやすさにも関係するだろうし、英語ならば今回のように韓国で音楽番組に出演する上でも支障がない。日本語だとこうは行かなかったはず。そもそも日本のグループだからと言って日本語で歌わなければいけないルールなどない。だから単に私が言語の区別にこだわりすぎなだけなのかもしれない。

しかし日本よりも遥かに国際的な市場とそこでの競争力を必要とした韓国のKPOPが母国語での音楽活動を選んだのはなぜだったのかを考えることにはきっと意味がある。

この記事には何かはっきりした結論を用意していたわけではないけど、ここまで書いてきてBABYMETALのことを思い出した。

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ポップとメタルを独自の感性によって非常に高いクオリティで組み合わせ、世界に向けて真正面から日本語で歌って見せたBABYMETALは世界進出から10年近く経った今、国内においてほとんど孤高の存在になってしまっている。

彼女達の国際的なキャリアが最初から緻密に計画されてのことだったのかは知らない。しかし2022年、世界を見据えて戦略的に誕生したXGがKPOPの強い影響下に英語で歌うという光景を見ていると、その成功を予感しながらもアイドルが国際化する時代にあって日本のアイドルが進むべき先がいよいよ分からなくなる。