猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

戦いの行方。LE SSERAFIM「ANTIFRAGILE」

 

HYBE発、第4世代ガールグループの有望株・LE SSERAFIMが5月のデビュー以来初となるミニアルバム「ANTIFRAGILE」を発表した。同名のタイトル曲は前作「FEARLESS」からの連続を強く感じさせて、LE SRRAFIMが掲げる「IM FEARLESS」というコンセプトを新たな装いで表現している。

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5人体制でのリスタートということで、前作と比べて各メンバーの見せ場がバランス良く配置されているところが目に付く。相対的にパートが増えたことでウンチェさんの存在感が増してグループに新たな魅力が加わったようにも見える。特徴的なマッスルポーズがなぜかネコの動きになるところも良かった。

以前にHYBEが作曲家を公募していた時、その募集要項の中でメロディのはっきりした音楽で応募されても評価はできないというようなことを明記して話題になったことを思い出した。その言葉通り「ANTIFRAGILE」もデビュー曲「FEARLESS」も規則的なリズムの反復を意識させて、まるで一本の縄を手繰りつつ時折その結び目で変化をつけるような趣がある。

その一方では歌詞からもうかがえるようにメンバーの過去のキャリアを強調することでグループが持つ客観的なイメージに対し敢然と向き合おうとする姿勢が明らかで、そこからは音楽から感じる慎重さとは対照的な印象を受けた。

 

アルバム全体を聴いてみると、多彩な曲でメリハリをつけて聴き手を飽きさせない作りになっていて、グループが良い感じに軌道に乗りつつあることを感じさせた。たとえば「No Celestial」は明るいロックサウンドでアルバムの中でもひときわ輝いていた。

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ひと昔前に流行っていたディズニーの青春ミュージカル映画を彷彿とさせるようでタイトル曲に次ぐ人気を得ているこの曲、ホ・ユンジン、つまりアメリカ名がジェニファーである彼女の華やかな魅力が最も躍動していると感じたけれど、そのルーツを思えば自然なことなのかもしれない。

 

「私の首を切ってみて」と歌う「The Hydra」で恐ろしく始まったアルバムの最後を飾るのが「Good Parts」。上手くいかない時、情けなく感じられる自分も大切にして向き合って行こうと歌いながら「ANTIFRAGILE」を閉じる。こうした曲の配置を見ると、前作における「FEARLESS」と「Sour Grape」の組み合わせのように、ルセラはアルバムの中で強気と弱気を使い分けてくるスタンスが、そのコンセプトのせいかより目立つ。

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ANTIFRAGILE」はメディアを賑わせたスキャンダル後に発表される初めてのアルバムということで、カムバックショーケースではそこに関して記者からの質問もあったという。この光景はデビューの時にも見られたもので、あれから数か月たった今でもグループが騒動の余波から完全に抜け出せていないことを感じさせた。

個人的にも今回のカムバについて、そうした葛藤までコンセプトに盛り込むかのようにして逞しく戻って来たルセラの姿はまさに「ANTIFRAGILE」で頼もしく映る一方で、前作から続くその勇敢さのアピールが少々声高に聞こえる瞬間があった。

LE SSERAFIMは有名メンバーが在籍する事実が作る世間のイメージと正面から向き合う格好でグループをスタートさせた。しかしそこへ降って沸いた現実のスキャンダルが更なる好奇の視線を引き寄せたことで、葛藤の意味がやや変化することになった。

つまり今ルセラが見せているファイティングポーズは何を相手としているのかが少々紛らわしい。ひょっとしたら、あわよくば、プロデュースに携わる人達は例の一件が招いた世間の好奇心までもルセラが戦うべき対象の一つとして、グループを巡る設定の中に回収しようとしているのではないか、と思わせる。それが自分の邪推だとしても、「IM FEARLESS」というコンセプトが現実から挑戦されていることは確かだと思う。

ルセラはその音楽やダンスが描くものよりもう少し複雑な戦いを強いられている。その結末は一つの曲ひとつのカムバの成功ではなく、キャリアを重ねていく中で自然に導かれるものになるはず。そうなった暁に、あの5名が私達は私達だと自然に口ずさめるようになった時に見せる姿はどのようなものなのかに興味がある。