PRODUCE 101 JAPAN THE GILRS(通称、日プ女子)のセンターに、日韓両国のサバイバルオーディションで挑戦を繰り返して来た櫻井美羽さんが立っているのを見た時には驚きと共に思うことがあった。
BTSに代表されるKPOPの世界的な隆盛以降、日本と韓国におけるアイドルの力関係には著しい勾配が生まれている。その韓国を目指して頑張って来た彼女が一転、こうして日本のプログラムへ参加する事実は何を意味しているのか。他でもない彼女はKPOP本国から日本へと挑戦の場を移した自分自身とどう向き合っているのか。第4回放送は、まさにその葛藤の瞬間を映すことになった。
きっかけは舞台評価に向けてグループでトレーニングに励んでいるとき、彼女がコミュニケーションのすれ違いをきっかけに周りから孤立してしまったことだった。
映像を見る限り、チームのメンバ-を選んだのは自分であるという意識や、韓国で訓練を積んで来たという自負から皆を引っ張っていこうとする気負い、それらが空回りして周囲と齟齬をきたしているように感じた。そして思い詰めた彼女は途方に暮れて涙を流す。
彼女は練習の進捗状況をトレーナーに確認してもらう機会を捉えて、仲宗根梨乃さんに対し、自分が浮いているせいでチームワークを乱しているのではないかという不安を告白する。
この場面での、ここに来て初めて自分が周りにいない「珍しいタイプ」だと気づいたという櫻井さんの言葉は、言い換えれば韓国にいた時にはそのことを意識せずに済んでいたということであり、つまり日本という新しい環境に活動の場を移したことへの漠然とした違和感を間接的に吐露しているように聞こえた。
第4話予告編公開後に物議を醸した「日本に逃げてここでデビューしようとすんなよ」という仲宗根さんの発言はこの時の彼女に向けてなされたものだった。
櫻井さんの華々しいKPOP挑戦歴は、一方でプロのアイドルとしてデビューするための何かがその都度足りていなかったということも意味する。もしかすると彼女はデビューを逃し続けた挫折感と、これまでKPOPの厳しい環境に食らいついてきたんだという自尊心の狭間でもがいているのかもしれない。
仲宗根さんは違う事への挑戦を怖がることなく自分と向き合えとも言っていた。その一連の忠告は、あなたにはまだ足りないものがあるのだから、新しい何かを見せないとここ日本でもこれまでと同じ失敗を繰り返すことになるという意味だと、自分は解釈した。そう指摘することで彼女の迷いを突いたのだと思う。
櫻井美羽さんはスキルと存在感で言えば上位11人には入るはず。だけどアイドルの評価基準はそれだけではない。舞台を通して新たな輝きを放つ参加者が続々と現れる中、その相対的な優位は揺らぎつつある。
そんな彼女にとって今後カギになるのは他の参加者との関係性、特に石井蘭さんとのそれだと思ってる。彼女が櫻井さんに対して見せる真っ直ぐな闘争心とリスペクトは今回の日プ女子という群像劇に物語としての力を与えているだけでなく、何より櫻井さん自身に新たな角度から光を当てているように見える。彼女がアイドルになるために必要なものはそういうところから見つかるのかもしれない。