2022年5月に1人目のメンバーが公開されて以降、徐々に人数を増やしつつその都度ユニットを結成する形で音楽活動を行ってきたtripleSが、ついに24人全員が揃ったことを記念して5月8日に初の正規アルバム「ASSEMBLE24」をリリース、そのタイトル曲「Girls Never Die」のMVを公開した。
喪失を思わせる場面が連続する本作のMVだけれど、歌詞が伝えるメッセージは確かに聴き手を鼓舞し続ける。夜更けの漆黒に身を沈めながら曙光を望むような迫真のMVは映像的なインパクトを重視するKPOPの映像作りとは一線を画していて記憶に残る。
tripleSは総勢24名という数字のインパクトが大きいけれど、良質な音楽と洗練されたビジュアルプロデュースがグループのイメージを先導するという、KPOPアイドルとして理想的なあり方を実現している。初のユニット曲でグループのデビュー曲でもあった「Generation」以来それは一貫している。会社代表でPDでもあるチョンビョンギはかつてLOVELYZを手掛けて高く評価された著名な業界人だけれど、今回もその手腕と才能を証明して見せたことになる。
最近のKPOPシーンではアイドルの実力論議が盛んだけど、そういう視点で見た時にtripleSはそこまで高いスキルを誇るようなグループではない。一方で優れた音楽とメンバーのビジュアル、統一感と高級感のあるイメージ作りというプロデュース面ではKPOPの真髄を感じさせる。24人というメンバー数から臨機応変にユニットを繰り出して活動するやり方や、独自のファンコンテンツ展開も併せて見ると、tripleSにはKPOP特有のプレッシャーから自由になろうとする姿勢が見える。
思い出してみると、徐々に数を揃えてゆく大人数グループという仕掛けをチョン・ビョンギは6年前にLOONAで行っていた。メンバーをユニットごとに編成して新曲と共にお披露目するというやり方も当時と共通している。
2017年頃の自分はその神秘的な世界観に惹かれてLOONAの動向を追いかけていた。現在のtripleSに劣らず、当時からチョンビョンギの仕事は確かで、LOONAの夢幻的なイメージを音楽とMVで見事に表現した数々のユニット曲を眺めながら完全体の暁にはどのような傑作を見せてくれるのかと期待は高まる一方だった。
ところが満を持して発表された完全体の曲が自分には合わなかった。期待が大きくなりすぎていたのかもしれない。LOONAってこんな感じだったっけ、と首をかしげるうちにPRODUCE48が始まってしまいIZONEが誕生した後はそっちに夢中になった。
その後しばらくしてPDのチョン・ビョンギがグループの方針を巡って会社と意見を違えて去り、LOONAは海外を中心に人気を得たものの結局はメンバーと会社の関係が悪化して法的紛争の末にグループは事実上の解散となった。
このような経緯があったため、個人的には6年前に期待していた何かに今回「Girls Never Die」でようやく出会うことが出来たという感慨のようなものがある。LOONAの物語が今も形を変えて続いているのかもしれない。