猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

「UNDER15」とKPOPの低年齢化

 

ここ一週間のKPOP関連ニュースはNewjeansの独自活動の中止を認めた裁判所の判断に関するものでもちきりだったが、その陰でもうひとつ論争を巻き起こしていたのが韓国MBNで放送予定だった「UNDER15」という、15歳以下の女子児童に参加者を限定したガールグループオーディション番組の是非についてだった。

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放送予定だったと書いたように、放送開始日である3月31日直前の28日になって放送局側は放送中止を決めた。こうした番組というのは初回放送時点ですでに先の放送分の収録まで済ませているはずなので、それでもなお中止を決めたというところに事態の深刻さを局側が重く受け止めた事が伝わって来る。

 

最年少参加者は8歳だという出演者の子供達が、KPOPアイドル風の露出のある衣装を着て派手なメイクを施された宣伝写真が公開されるや未成年を性商品化するものだと非難が殺到したのが騒動の発端だった。

さらに成人にとってさえ精神的・肉体的負担になる過酷なサバイバルオーディション番組というものに子供を出演させることの問題も指摘された。

 

しかし、そうした批判に対して製作陣は当初真っ向から反論。出演者たちは真剣に夢に向かって努力しているとか、親も同意しているとか、製作陣は女性が中心になっている、というようなことを述べていた。つまり児童の性商品化などという批判は誤解だという立場だった。報道陣に向けて初回の放送分を一部先行公開して理解を得ようともした。

 

製作サイドがそんな調子なので批判の声は高まる一方となり、129もの市民団体が一斉に批判声明を出し、記者会見を開いて放送中止を求める事態にまでなった。

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上の記事から番組製作サイドへの批判の主なものを抜粋すると、まず15歳以下という年齢制限を設けた番組の企画趣旨について、

子供たちの夢を応援するという善意で包装し、私たちの共同体が合意した最小限の常識というラインを更に低下させるという宣言であり、児童の人権を退行させることにメディアが乗り出すという公表に他ならない

と指摘。どんなに番組の出来が良くても、子供たちに熱意が溢れていても、保護者の同意が得られていても、このような放送が容認されてはならないと批判した。

また児童である参加者が放送後のネットにおいて悪意ある反応に晒される危険性を指摘し、そうした事態が起きた時に事前同意の有無に意味があるのかという声もあった。

記事は更に番組が伝えてしまう誤ったメッセージを危惧する専門家のコメントを載せている。

「15歳以下の児童は身体的、精神的にバランスよく成長できるよう保護と支持が必要な時期」として「容貌に対する圧迫と過度な競争は出演児童だけでなくこのプログラムを視聴する同年代の児童たちまで否定的な影響を与えかねない。 製作陣は果たしてこのすべての影響を十分に考慮したのか、その企画意図を振り返ってみなければならない」

 

「UNDER15」を制作したのは数々の音楽系バラエティ番組をヒットさせてきたクレアスタジオという会社で、最近では日本でも話題になった「韓日歌王戦」を手掛けている。

この番組についての問題点は上で指摘される通りで、そもそもこのような番組が企画段階を通過して実現直前までいったという事実が驚きだが、それでも「決まった事だからしょうがない」ではなく土壇場での放送中止という結果に繋げた人達の動きや、批判を受け入れた側の判断も注目すべきものがあった。

 

最近はKPOPシーンにおいてアイドルの低年齢化ということが現象として取りざたされることが増えている。なので今回の一件をKPOPそのものに潜在する問題として取り上げようとする動きも一部で見られるけれど、あくまで「UNDER15」は特殊な話題だったと思う。

そもそも今から25年も前にBoaは14歳でデビューしており、アイドルの低年齢化という傾向は昨日今日明らかになったような話ではない。働く未成年を保護するためにどうすべきかということは常に議論と対策が行われて来たはずで、これからも続いていく課題であることに変わりはない。

 

それに現実として若さが話題になるKPOPアイドルはほぼ14,5歳の年齢を下回ることはなかったように思う。KPOPは舞台での質を重視することで今の地位を築き上げた以上、その根幹をなすアイドル候補生に相応しい訓練を一定期間施すとなると、早くてもその位の年齢になるのだと思う。

つまり小学生の児童までも表舞台に挙げようとした「UNDER15」の番組スタンスは、KPOPが持っている基本的態度とは似て非なるもので、そこは一緒にするべきではない。色々な条件が重なった結果として若年でのデビューもあり得るという現実を誤解し、年齢という数字そのものに最大の価値を置いてしまった事が「UNDER15」の間違いだったように見える。