6月18日に「STYLE」で始めてカムバしたHearts2Hearts。そのリーダーを担当するジウさんが日本の音楽イベントで流ちょうな日本語を話す姿が話題になっているのを知って感慨深い気持ちになった。SM所属ガールグループの中で自然な日本語を習得した韓国人メンバーが存在するのは少女時代以来18年ぶりのはず。
更にいえば親しみやすさと可愛らしさというKPOPアイドルの王道コンセプトに立ち返ったという意味でも少女時代以来ということになるので、ともかくHearts2Heartsの登場は少女時代の面影と18年という時間を連想させる。
創業者で中心人物だったイ・スンマンが2023年、経営権争いの末に会社を離れてから新体制となったSMが、2025年2月に初めて送り出したガールグループがHearts2Heartsだった。
この8人組グループをデビュー曲「Chase」で初めて見た時に「普通のKPOPグループ」という印象を持った。ただしSMのガールグループにとっては普通であることが特別だった。
というのもHearts2Heartsの前にはf(x)、RED VELVETそしてaespaというKPOPシーン屈指のクセつよ路線が10年以上も続いていて、それは自ら少女時代で築いた王道の先にKPOPの可能性を広げ続ける方針があったからではないかと想像する。
だからこそSM新体制を機会に原点回帰して王道的なアイドルコンセプトを試みたことは変化した社内事情を映しているようにも見えた。
冒頭でも触れたように、少女時代とHearts2Heartsの関連でいえばジウさんが流ちょうな言葉を話す日本語学習者であることも象徴的だと感じる。少女時代といえば日本で芸能活動経験があったスヨンさんがネイティブレベルの日本語を話せることで有名だった。
リーダー兼センター級ビジュアルを担当する彼女が日本語話者という事実は、日本人のいないHearts2Heartsにとって戦略的にも重要だと思う。
これまでSMガールグループのダンスパフォーマンスは、その独特な世界観を少人数メンバーによって表現する目的に沿ったもので、いわゆるカル群舞的なダンスの強度に関わる魅力はもっぱらボーイグループが担っていたようにも見える。
そこへHearts2Heartsが2025年基準のダンス強度を持つガールグループとして登場した。その意義はパフォーマンスバージョン映像を見るとよく伝わる。
大人数メンバーが一糸乱れぬ動きで一斉に床を踏んだ時のダン!という音が雄弁に物語るけれど、SMがガールグループのダンスに力と速さ、そして角度の美学を求めたらどうなるのかという、KPOPシーンに存在してたかもしれない疑問に答えを出している。
ちなみに曲のクレジットにはデビュー曲「CHASE」の時からSMお馴染みの作曲家であるKenzieの名前が載っている(STYLEでは作詞のみ)。同じようにSMの音楽的中心と見なされていた作曲家ユ・ヨンジン氏は経営権紛争に際し「俺は兄貴についていくぜ」みたいな勢いでイ・スンマン氏の後を追ってSMを出たので、こういうことは人それぞれだなと思った。
余談その二。サムネが可愛いと評判のカルメン。
KPOPの世は以前としてガルクラ・HIPHOP勢が幅を利かせていて、Newjeans以降現れたナチュラル系にも勢いがある。しかしKPOPの王道というものは常に誰かがその魅力を再発見し続けるもので、温故知新という言葉はたぶん本当のことなんだろうなと思わせるHearts2Heartsの登場だった。