猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

JYPのたましい

8月に日本デビューしたRocket Punchの可愛らしい「Lets Dance」、そこで歌われる日本語がとても流ちょうで素晴らしく、印象に残った。本国活動とは少し違ってロケパンのかわいい部分だけを抽出したみたいな日本向けの姿も良かった。

スムーズな日本語で歌うKPopグループということで思い出したけど、前回記事では無念の想いが強すぎて、うっかりヨチンと言えば素晴らしい日本オリジナル曲の数々、という大事な側面に触れ忘れてた。

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韓国で表現してるヨチンの姿をそのまま損なうことなく日本向けに翻案したような完成度は、日本活動の理想的な在り方のひとつだった。今さらながら、メンバーに日本人がいるわけでもないのにここまで綺麗な日本語で歌えたことは素晴らしいと思う。

ただ最近感じることに、KPopアイドルの歌う日本語の発音は果たして流ちょうである必要があるだろうか、というのがある。前から日本のポップ音楽シーンには日本語をカタコト風に歌うのがカッコいいみたいな風潮があって、しかも最近では一歩進んで日本語の音の区切り方までをぎこちなくしたような、それこそKPop曲の日本語版のような歌い方をよく耳にする。

なので今KPopグループの仕方なしのカタコトやとりあえず翻訳しました感の残る日本語版楽曲が、かえってクールなものと捉えられかねない、それらを単純に拙いものとして片づけられない、ややこしい状況になってる。でもそんな中だからこそ余計に、日本語の歌を正確に歌うヨチンやロケパンの姿が好ましいものに思えた。

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硬質でタイトな音に合わせて疾走するITZY「LOCO」が、珍しく無骨な迫力があって、とても良かった。緊張感のある曲調の中でも可愛らしさのある振り付けが込められてるところのなどは、ガールグループに定評のあるJYPらしさを感じた。

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明示はされてないけど本作はおそらく「Not Shy」「マフィア」と同一線上にある作品で、ITZYがデビューから続けたティーンクラッシュ風3部作の次の段階に当たるものの一つなんだと思う。

自分はデビュー当初の「私は私」と歌うコンセプトを、外部から行動を強く規制されるアイドルという存在との関係で矛盾を生むものではと感じていた。もちろんエンパワメントのメッセージを歌に乗せて世に届けるという意義はあるにせよ、明確な意図を持たせたためにかえってアイドル業界の二枚舌を意識させていたように思う。なので「Not Shy」以降に見られるラヴソングという形へITZYなりの積極性を取り込んだバランスのほうが自分には受け入れやすく、同じ性格の「LOCO」からも素直に感銘を受けた。

気付けばもうデビューから3年目を迎えているITZYは、自分達のデビュー当時の華々しい姿だけでなく、来年2月の登場が予告されたJYPの妹グループという、自他からなる対象と向き合わなくてはいけない局面を迎えている。「LOCO」はITZYがそのような過渡期にあることを示していたようにも思う。

 

 

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先日、デビュー以来初めての有観客ライブというコロナ禍ならではの通過点を経たNiziU。そのタイミングで新しい映像が公開された「Take a Picture」の、背筋が伸びるようなパフォーマンスを眺めながら、彼女達も間違いなくTWICEやITZYの妹分なんだと再認識した。「君が好き」的ないたって普通のアイドルソングが9人によって特別な魅力を帯びていく光景はKPopのマジックを感じさせる。靴と床が摩擦する音を響かせながらハードなダンスとフォーメーションに裏打ちされた分厚い可愛らしさを見せつける様子は見間違いようもなくJYPのクオリティだった。

その人数や雰囲気のためにTWICEのイメージが重なるNiziUには、その可能性を示したデビューの大成功もあって大きな期待が寄せられている。しかし現状としては少し滞り気味な活動への不満の声も聞かれるという。

これには韓国の芸能企画社であるJYPが日本でソニーと組んで手掛ける国際的グループという元々の難しさもあるだろうし、予期せぬ社会環境の変化のせいで日韓の自由な移動さえままならず、韓国でJYPが持つ様々な資産を生かしつつ活動するという事前の想定が狂ってしまった可能性もあるのではと想像してる。

そんな中で今回の「Take a Picture」パフォーマンスはメンバーの成長とチームワークの向上によって9人だけの舞台が作られつつあることを教えているように見えた。デビュー当時の熱狂を遠巻きに見ていた自分のような人間にとっては、これから先の展開が楽しみに思える良いきっかけだった。