2022年から2023年にかけての冬はNewjeansの季節だった。KPOPの年末年始は特番や音楽祭が目白押しのため、その中で埋没してしまうことを恐れて通常はこの時期の新曲リリースは好まれないと言われる。でもNewjeansは「Ditto」そして「OMG」という冬に相応しい2曲でシーンを席巻して、そんな業界のお約束を吹き飛ばして見せた。
思えば昨年夏のNewjeansの登場そのものがKPOPの中に出来上がっていたありきたりを解体するものだったように思う。
NewjeansはKPOPに新しい展開をもたらした。近年のKPOPガールグループシーンを席巻したトレンドといえば間違いなくガールクラッシュ、通称ガルクラだった。
女性が憧れるような同性アイドルを意味するこのコンセプトは、かつてアイドルが男性に好まれる可愛らしさやセクシーを重視していたことへのカウンターとして評価されただけでなく、力強いダンスやヒップホップと親和性が高いKPOPとはそもそも相性が良かったようで一気にシーン全体を巻き込んで流行した。
その象徴は言うまでもなく2016年デビューのBLACKPINKだった。世界中で活躍する彼女達は今なおガールグループのトップであり続け、多くのグループがその影響下に置かれている。
しかし流行し過ぎた結果として右も左もガルクラというような状況に至り、ファンの間からは疲労感を訴える声も聞こえるようになっていた。だからと言ってKPOPとの相性の良さは否定できず、気づけばガルクラというコンセプトはまるでKPOPにとっての強迫観念になったかのようだった。
そんな時にNewjeansが「Attention」や「Hypeboy」をさりげなく歌って見せた意味は大きかった。挑発的なラップも画面をにらみつける視線も、パワーボーカルを見せつけることもない。献身的で躍動感あふれるダンスパフォーマンスはKPOPお馴染みの「カル群舞」が持つ切迫した美しさとは一線を画す解放感に溢れていた。カメラに背を向けて仲間同士で楽しむことを優先しているかのような振り付けは、自然体のKPOPという新しいコンセプトを感じさせた。
特に「Ditto」のハミングは2022年冬を決定づけた曲の印象的なイントロというだけでなく、Newjeansの登場でKPOPが新しい局面に入ったことを象徴していたように感じた。
そんなNewjeansの大成功に関しては、今や時の人となった感のあるミンヒジンPDの特別な才能によるところが大きいとされる。ただ個人的にはその功績については疑いないものの、ガルクラではない、かといって昔ながらの王道の焼き直しではない次のKPOPが生まれる気運はシーン全体で高まっていたのではとも感じている。
たとえばNewjeansのデビューから3か月後遅れてリリースされたtripleS AAAの「Generation」や、更に1か月後ひっそりデビューしたFIFTY FIFTY「Higher」からは、共にKPOP特有の緊張感から自由になろうとした結果、それぞれがそう遠くない表現にたどり着いたという印象を受ける。
この二組のデビュー時期は確かにNewjeansより少し遅れるけれど、だからといって模倣だと片づけるには難しい完成度とタイミングだと感じる。特にtripleSを手掛けるチョン・ビョンギがLOONAの初期にプロデュースしていた多彩な楽曲と「Generation」との連続性を思えば、次のKPOPを具体化させようとする試みはいくつかの場所で同時進行していたと考えるのが自然に思える。
Newjeansの登場は確かに画期的ではあるけれど突発的なものではなく、あくまでKPOPに携わる人達の新しい表現を生み出そうとする日々の挑戦の、最も華々しい成功例の一つなのかもしれない。
ともあれNewjeansがKPOPに新たな季節をもたらした結果、これからはBLACKPINKが果たしてきたような役割を彼女達が担うことになることが予想される。でもだからと言ってガルクラの魅力が否定されるというようなことではなく、つまり選択肢が増えた分だけ今後のKPOPがもっと面白くなることは確かだと思う。