猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

EVERGLOWのリスタート「SLAY」

 

タイトル曲「Pirate」で活動した前回のアルバム「RETURN OF THE GIRL」から1年8か月もの期間を経て、ようやくミニアルバム「ALL MY GIRLS」で戻って来たEVERGLOW。半年程度になることの多いKPOPグループの新曲ペースの間隔を考えるとこれは相当な長さで、順調に活動しているように見えたEVERGLOWがどうしてここまでの時間を掛けなければならなかったのか不思議に思う。

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ただ今回の新作では従来の作曲家陣について大幅な変更が加えられていることからすると、グループの今後の方針について再考する機会があっただろうことは想像できる。

これまで「DUN DUN」や「LA DI DA」といったEVERGLOWの代名詞と言える音楽の数々を担っていたのはスウェーデンの作曲家であるOLLIPOPを中心にした顔ぶれだった。全ミニアルバム7枚中5枚のタイトル曲を手掛け、事実上EVERGLOWの音楽とは彼らの存在を前提にしていた。途中盗作騒動に巻き込まれたりしたことはあったけれど、EVERGLOWの名前を世界に知らせることに大きな貢献をしたことは間違いない。

ちなみに個人的には「LA DI DA」付近で頂点に達した金属的ガルクラとでも言うべき現行のスタイルが硬直化しつつあるように感じていた。会社がEVERGLOWについて根本的にどう考えていたのかは分からないけれど、何らかの変化を考えるタイミングだという認識はあったのかもしれない。

 

ところでEVERGLOWには「Bon Bon Chocolat」というデビュー曲がある。KPOPの流行からすっぽ抜けたところで偶然成立してしまったかのような大胆不敵で華麗なこの曲は、その後のEVERGLOWのタイトル曲群とは似て非なる特別なものに感じられ、もしそのデビューに忠実であったら6人が辿るキャリアは良くも悪くも今とは大きく異なるものになっていたとさえ思わせる。

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この「Bon Bon Chocolat」を作曲したのはBTSの「ON」などで世界的に知られるMelanie FontanaとMichel Lindgren Schulzを中心にした作曲家陣で、セカンドミニの表題曲「HUSH」や、新作の収録曲「Make Me Feel」など5枚のミニアルバムに全5曲を提供している。

FontanaとLindgrenが関わった曲は世間一般に知られたEVERGLOWとは別の姿を見せてくれる。激しくインパクトの強いタイトル曲とは異なる、いずれも独特の抒情性を感じさせる点で、単なるアルバム構成上のバランサーとしての役割に留まらない存在感を持つ。

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OLLIPOPからいったん距離をとると決めた時に、もしかしたらタイトル曲の担当を「Bon Bon Chocolat」の作曲チームに戻して変化をもたらす可能性もあったかもしれない。個人的にはそんな展開も見てみたかった。しかしこれまでのグループの蓄積を思えばそれはとてもリスキーな判断になる。だからここまで築かれたEVERGLOWの特徴を再解釈するという方法をとったことは自然な判断だと思う。

今回のタイトル曲「SLAY」は特徴的なイントロでEVERGLOWの再開を知らせながら、その後の構成ではメンバーの魅力を整理して披露することで改めて自分達が何者なのかを紹介するような、そんな丁寧な態度が感じられる。後半シヒョンの可憐なソロからミアの力強いボーカルそしてイユのキュートでサベッジなラップへと繋がっていくクライマックスは確かにEVERGLOWの魅力というものを明瞭に示している。1年8か月という空白期間はあまりに長すぎたけれど、「SLAY」はその不足を埋めるのに相応しい一曲になった。