猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

VCHAから感じるアメリカン

 

NiziUを生んだNizi projectのアメリカ版である公開オーディション番組「A2K」から誕生した6人組ガールグループ「VCHA」が、1月にアメリカでデビューした。

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私は韓国のKPOPアイドルが好きなので、いくらTWICEのJYPからデビューするといってもアメリカの人達だし、ということで特に注目してなかった。でもデビュー曲「Girls of the Year」がJYPらしい前向きな姿勢が存分に表れた佳作だったので追いかけてみる気になった。

興味を持って6人のメンバーひとりひとりの特徴を眺めていると、さすがにアメリカで結成されたグループということで日本や韓国とは大きな差異がある事に気付いた。日韓では当たり前の、自身のルーツに関わる同質性がVCHAには全くない。アメリカは人種のるつぼという、むかし学校で習った表現を思い出した。国内各地でオーディションを行ってアイドルグループを作ろうとしただけで、自然とこれだけ異なるルーツの持ち主が集ってしまうところにアメリカという国の特異性を感じた。

具体的に見てみると、メンバーは6名中5名がアメリカ国籍で、ひとりだけカナダ国籍。両親の出身地域では、KG(写真で左から2人目)は外見から分かるように白人の両親を持ち、日本で一般的にイメージしやすいアメリカ人。ラテン系の容貌を持つ2人のうちカミラは両親がキューバ人とスペイン人で、サヴァナは母がヴェネズエラ人となっている。

一見すると白人女性のケンダル(KGの右側)は母がベトナム出身ということで、言われてみればその顔立ちからは東洋的な雰囲気が感じられる。最年少14歳のケイリー(右から2人目)は韓国人の両親の元にアメリカで生まれた韓米の二重国籍。

そして同じく東洋系の外見を持つレクシ(右端)。移民と言えば経済的な理由だけでなく政治的な動機でも行われるけれど、それが彼女の場合には際立った形で表れている。彼女はモン族にルーツを持つアメリカ人で、東南アジアの山岳民族であるモン族がアメリカで暮らしていることには、ベトナム戦争というアメリカが抱える負の歴史が関係している。少し前にはアメリカで起きた大騒動をめぐるニュースの中においてその名前が出て来たこともあった。

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そういえば昔よく見たディズニーのミュージカル映画「ハイスクールミュージカル」は、主要な登場人物が多民族国家アメリカの建前を表現したように白人・黒人・ラテン・東欧系というバランスだった。VCHAのメンバー構成がそうした理想を意図したかどうかは分からないけれど、結果として似たような比率になっているのは興味深い。

加えて、これだけ多様な出自を持つ人達が「VCHA」としてKPOPアイドルという枠組みにきれいに収まっている風景は、KPOPグループを作り上げるシステムの普遍性を証明しているようにも見える。

KPOPの世界進出がこれまでとは異なる段階に入ったとも感じさせるVCHAについて、日本や韓国における人気の行方も含めて、これから注目していきたいと思う。