猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

4年目に帰る場所。OH MY GIRL「5番目の季節」

アイドルのステージが特別な輝きを放つ瞬間は、確かにあると思います。

それは例えば、TWICEの「LIKEY」でダヒョン&チェヨンのラップパートからモモさんのダンスブレイクを経てメンバーが全員集合する一連のシーン。

例えば、IZ*ONE「ラヴィアンローズ」後半においてユリ&咲良が交差して後、その宮脇さんに率いられるように全員が前に向かって歩き出して以降の圧巻の流れ。

fromis_9「LOVE BOMB」でも後半、何気なくイントロと同じメロディを繰り返して場を鎮めた後で、ソヨンさんのソロをきっかけに全員が一斉に弾ける展開。

メンバーそれぞれの個性と役割、グループ全体としての色や特徴に対する理解。そしてこれらを最大限生かすための楽曲と振り付けの選択。

こうした個々の要素がきちんと噛み合った時にだけ生まれる特別な瞬間は、音源成績などの数字的評価とはまた別に、この世界に関わる人が皆作り上げる事を望み、そしてその全員が成功するわけではない、選ばれた人だけが触れることの出来る一瞬だと思います。

5月8日に発表されたOH MY GIRL「5番目の季節(SSFWL)」は、そうした瞬間を生み出すことに成功しており、4年目のグループにとって代表作となり得る美しさと完成度を備えた作品になっています。

 

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バレエの動きをモチーフにしたというこの舞台はイントロから何から美しいのですが、その中でも目立つのがビニ・ユア・スンヒ・ヒョジョンの4名が主導するボーカルの競演でした。

特にビニ・ユアの2人は公式的にメインボ-カルとはされていないものの、前作・前々作を通して存在感を増しつつあったものが、今回遂にボーカル面でチームの柱の一角となったことを感じさせます。

そして何より、上で挙げた「特別な瞬間」を成立させる中心となったのがこの4名のコンビネーション。

2番の最後、スンヒパートが終わるとすぐさまシームレスにユアパートが始まり全員が舞台中央に集合。そしてヒョジョン&スンヒのボーカルハーモニーという最大の見せ場を作りながら、ジホ&アリンがアクセントを加えつつスンヒのソロ、そしてビニ&ユアが最後のメロディを歌い出す。

この美しくも息をつかせない展開は、まさに限られたグループだけが表現出来る特別な光景です。

そしてこの中でも一番感じるところがあったのが、ヒョジョン&スンヒという2人のメインボーカルが背中合わせで歌い上げる場面。ここはまるで、アイドルをテーマにした映画のクライマックスを思わせる凄みがありました。

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KPopグループといえば、大抵のところがメインとなるボーカルを複数揃えるという編成を採用しています。となれば、おそらくこのようにボーカル2人が舞台中央でハモるような、美しく劇的なシーンをステージの理想として描く人は少なくないはず。

しかしこのような展開は曲の完成度やメンバーの実力といった根本的な条件を高いレベルで揃えないと、全体から変に浮いてしまったり、わざとらしくなったりで恥ずかしい事になりかねない、とても難しい一手でもあると思います。

それをOH MY GIRLは見事にやり遂げた。

あの場面に至るまでの曲とパフォーマンスの積み重ねが劇的な瞬間を当然の帰結であるように見せていることも、今作の完成度の高さを証明していると思います。

 

今回の「5番目の季節」のインパクト、これは2019年現在ガールクラッシュ系が勢いを持つKPopシーンにおいて、少数派であるスカート派が成し遂げた成果という意味もあると思ってます。

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スカート派とは、読んで字の如くスカート衣装を多用するアイドルグループのこと、という私の個人的な表現です。

しかしより本質的には、舞台で風になびくスカート表現を必然とする楽曲やコンセプトを用いているアイドル、言い換えると北米的というよりも東洋的な美的感覚を重視したグループと表現できるかもしれません。

例えばGFRIENDやLOVELYZそしてOH MY GIRLなどがここに分類されると思います。

現在のKPopガールズのトップに位置するトワイス、ブルピンにレッベルと言ったアイドルは、皆コンセプトに差はありつつも、意図的にひらひらしたスカートから距離をとっている点は共通しています。あのアイズワンもそうであると言えるし、先頃デビューしたイッジもそう。

というかKPopガールグループの歴史的に、スカートよりもパンツスタイルのグループの方が常に主流であり続けてきたといえます。

その理由については色々と推測されますが、印象的なフックが仕込まれたアップテンポなポップミュージックというKPopの伝統ともいえるスタイルは、風の揺らぎをまとうスカートのゆったりした動きと相性が良くなかったのでは、とか一応想像しています。

そんな中、GFRIENDが「パワー清純」という一工夫あるコンセプトと共に制服姿で登場し、スカートをなびかせながらトップグループとなったことには特別な意味があったと思います。

彼女達とはほぼ同期であるOH MY GIRLも、時に気まぐれな妖精のように振舞いながらもスカートを手放す事はなかった。

そして今回の「5番目の季節」で遂にスカート派にしか表現できないステージがあるということを、GFRIENDとも違う、彼女達なりの表現で明確に証明して見せたのではないでしょうか。

 

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ステージを離れた所から今回のカムバを見てみると、着実にキャリアを重ねながら4年目にしてこのような成果を見せたOHMYGIRLとWMエンタテイメントの仕事ぶりは、浮き沈みの激しいこのKPop世界にあって賞賛に値するものだと思います。

デビュー後に何の説明もなく活動を休止させたり、いたずらにコンセプトを迷走させたりする有名事務所も多い中でのOH MY GIRLのようなグループのあり方は、間違いなくKPopアイドルとして理想的です。

ただ個人的な話をすると、一人のKPopファンとしての最近の私の興味はIZ*ONEやFromis_9そして公園少女と言った新人グループに偏り始めていました。

しかし、私が一番最初に好きになったアイドルグループはおまごるであり、そして全ての始まりは「CLOSER」のステージ映像だったということを今回思い出さずにはいられなかった。

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アイドルにありがちなを笑顔を捨て、ストイックで耽美的なまでに自分達の作り上げた世界に没頭する「CLOSER」のステージに、当時の私は自分の持っていた陳腐なアイドル像を崩される衝撃を受けたものでした。

一方で、デビュー後わずか5ヶ月で発表されたこの曲はその完成度の高さを評価されつつも、新人が行うには冒険的過ぎるコンセプトであるとも言われ、曲のポテンシャルに相応しい名声を得たとは言い難い結果だったと聞きます。

そのためか、それ以降のおまごるは笑顔と華やかさに溢れたコンセプトを連続して発表し、順調にアイドルとしての結果を出し続けてきました。

しかしあれから3年と7ヶ月。「5番目の季節」のステージに立つ7人は再び笑顔を消し、憂いを帯びた表情でカメラを見つめている。舞台に魔法をかけるような神秘的なフォーメーションもそのままに。

OH MY GIRLはあの時の続きを始めようとしているのだと思います。今度は誰にも文句をつけさせない、全てが相応しく準備されたステージと共に。その堂々として美しい姿には、まるで忘れられた伏線を鮮やかに回収するかのような迫力を感じます。

上述したような経緯から「CLOSER」は言わばおまごるのキャリアにおける霧に閉ざされた美しい孤島であり、もう戻れる場所ではないと思っていた私は、今回のような展開を、ちょっと予想してなかった。