Kpopに憧れる女子を世界中から10名集め、アイドルさながらの集団生活を通して韓国の様々な文化に触れたり、プロのトレーニングを経験したりしながら最終的にオリジナル曲「POPSICLE」を完成させて放送を終えたエムネットの番組「留学少女」。
西欧を中心とした参加者達の韓国に対する新鮮な驚きや感動だけでなく、彼女たちの夢であるKPop世界の厳しさに敢えて触れさせるところなどもあり、充実した番組となったようです。
おまけにTWICEの作品群で有名な作曲家が手がけた「POPSICLE」のクオリティーの高さも好評を得ています。
爽やかな余韻を残して終了した「留学少女」ですが、その放送を通して特に印象深かったのが、KPopが世界中で関心を受けるようになった結果生じたひとつの葛藤を浮かび上がらせていたところでした。
それは、KPopシーンは果たして韓国から遠く離れた外国出身のアイドルを受け入れる事が出来るのかということ。
これは言語やトレーニング期間の差から来る外国人特有のハンデとはまた違う難しい問題で、この番組は意外にもその葛藤を正面から取り上げていていました。
動画は「東洋系でない外国人はKPopの世界には受け入れてもらえないのでは」という悩みを出演者が率直に打ち明けているシーン。ちなみにこの問いに対するゲストのハソンウンさんの答えは、あきらめず自分を信じていればいつかは……というもの。
KPopが世界的な人気を得るようになった今、留学少女に出演した少女達のように韓国でアイドルとして舞台に立つことを夢見る人が世界各地で増えているのは自然な流れだと思われます。
しかしたとえ言葉の問題や練習の質・量の差を努力でクリアして見せたとして(実際に留学少女10名の中には韓国語が堪能な人も、プロレベルのダンススキルを持つ人もいた)、見るからに欧米系の容姿を持つ人が韓国でアイドルとして大衆から受け入れられるか。
韓国のKPopシーンは、というか日本を含め世界のファンはそうした景色の変化を歓迎できるのかという疑問はとても複雑で微妙です。
韓国のアイドルグループにおける、多くの外国人メンバーの出身地は中国・日本・タイなど東アジア圏内に留まっていて、このことは東洋人として外見に大きな差を生まない地域が慎重に選ばれているように見えます。
韓国との二重国籍を含め、アメリカやオランダなど西欧圏に国籍を持つアイドルもいますが、その容姿はどこか東アジアに紐付けられた特徴があって、結局は韓国人と並んでも違和感がない人物が選ばれてる。
例えばチョンソミさんは韓国・カナダ・オランダ国籍。
POPであることを突き詰めて、世界中で流行する音楽的要素を貪欲に取り込みながら成長を続けるKpopシーンの一方には、そうした世界性とはまるで対照的な意識が存在しているようです。
同時にこういう東アジア的美意識を含めた光景に熱狂しているは韓国内だけでなく世界中のファンも同じ、という現実もある。このことはKPopがKという頭文字を持ち続ける理由のひとつを表していると言えるのかも知れません。
そう考えると現状がすぐに変わるとも思えない。けれどもつい先日にはロシアはサハリン出身の歌手がエムカでデビューしていたり、マイナーな話題で終わりましたが全員外国人のKPopグループが誕生などというニュースも少し前にありました。
KPopの世界的人気に伴う新しい動きは確かに生まれているようで、留学少女はそのさなかにある異国の少女達の葛藤をカメラの前で明らかにしたと言う点でも大きな意味があったように思います。
ペユンジョン先生が「外国の人が韓国で成功するのは大変で、限界がある」と率直に述べるシーンも。
そして「留学少女」に関して、最後にもうひとつ触れておきたいのが他でもない、千葉恵里さんの存在。
「POPSICLE」で、欧米系の出演者の間に混じって踊っても違和感のないスタイルと存在感が目を惹いて、プデュ48での弱気な姿で有名になってしまった彼女なりのリベンジが一応は果たされたように見えました。
でもその一方でどうしても気になったのが、上で挙げてきたような異国の少女達の葛藤を彼女だけは共有してなかったという点。
自分の努力だけではどうしようもない壁の存在を意識する出演者達とは違い、千葉さんには特別な可能性が存在している。
日本という国籍に加え、プデュ48で集めた注目と今回のプログラム出演によって、彼女はすでにKPopの世界から一目置かれているのは明らか。
もちろん何をどうするのも決めるのは本人だし、何でもかんでもKPopへというのも違うと思います。
しかし成功への可能性すら選ばれた人にしか手に出来ないものだということを、遠い外国からやって来たルームメイト達の姿は表現していました。
これから色々な将来がありうるとは思いますが、個人的には今回の留学少女への出演が千葉恵里さんにとって特別な意味のあるものになっていたらいいなと感じました。