猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

愛と正義とIZ*ONE

韓国の「PRODUCE」シリーズ。この大人気サバイバルオーディション番組における投票数の不正操作が明らかになり、KPopシーンが揺れています。

 

アン・ジュニョンプロデューサー「PRODUCE 48」の投票操作も認める…シリーズ2作品への関与に衝撃 - ENTERTAINMENT - 韓流・韓国芸能ニュースはKstyle

 

視聴者からの数千万に及ぶ投票で選ばれたと信じられていたメンバーが、実は番組側による恣意的な操作で選ばれていた事、同時にその責任者であるプロデューサーがその地位を利用して芸能関係者からの頻繁に接待を受けていたことなどが明るみになり、広く社会からの怒りを買うことになりました。

その批判の矛先は番組を通して結成されて現実にアイドル活動を進めていたIZONEとX1にも及び、 特にIZONEは発売直前だったフルアルバムを発売中止にし、現在全ての芸能活動を中断することを余儀なくされています。

 

 

IZONEは悪くない

最初に断っておくと私はWIZONEです。つまりIZONEを応援してる。だからこの長たらしい記事の結論も「IZONEは悪くない」ということになってます。単純です。

ただ、これだけを言うためならツイッターで済むところ、どうして記事にしたかといえば、それは今回の「プデュ不正問題」がその落とし所を間違えてしまうと、関わるもの全員を傷つけてKPopアイドル史に前例のない負の歴史となる事を危惧したからです。

つまり、一部メディアが扇動するようにIZONEを解散させたり、メンバーを入れ替えたりすることは決して事態の解決にはならないし、今回の韓国社会の怒りの根拠となっている正義や公正の実現には繋がらない。むしろその逆になることを怖れています。  

 

以前私はブログでプデュ不正疑惑について触れた際、「ビジネスだし、こういうこともあるでしょ」的な意見でまとめていました。 日本的バラエティー番組の感覚に慣れていたせいもあるかもしれませんが、今思えば完全に見方が甘かった。

だからここ最近の韓国世論の沸騰には焦りました。解散やむなしなんて空気が広がるまでになるとは予想していなかった。

「不正」や「解散」という言葉とIZONEという名前が並べられたニュースが一斉にポータルサイトに溢れる光景は正直かなりきつかった。ひょっとしたら、という考えが頭をよぎったりもした。

しかし、やはり何かおかしい。

CJ ENMやMnetに対する怒りの原因には正義や公正を求める気持ちがあるのは分かります。

だとしてもなぜ、その責任をIZONEの12人が真っ先に負わなければいけないのか。

 

法に触れたわけでも、自らの意思で不正を働いたわけでもない12人の少女の将来を、衆人環視の下で奪って見せるような事が正義の名の下に行われていいはずがない。

公正を望んで正義を行うように求める声が、逆に新たな被害者を生み出すようなことは明らかにその主張と矛盾している。 

罪を負うべきはCJ ENMそしてMnetにおいて権限を持つ責任者であり、決してIZONEの12人ではありません。


時間は巻き戻せない

そもそもグループに対する非難や懸念の核心は、「CJ ENMやMnetの手で仕組まれたプデュという不正な選抜過程を経て生まれたIZONEには正当性がなく、グループをこのままにしておくことは不公正を許容するというメッセージを社会で認めることになる」という事だと理解しています。

だからIZONEは解散、もしくは不正に繰り上がったメンバーが居れば退出すべきという意見にも繋がる。

しかし一方で、今も止まない世界中のWIZONEからの声援は、彼女達が他でもないこの一年間の努力と献身によって愛を受けていることを表しているはずです。プデュ不正のあらましを理解しつつも、今この瞬間を生きて走り続けてきた12人の姿が世界中のファンの胸を打っている。

 

いまWIZONEの目に映っているのは過ぎ去ったプデュの物語ではなく、昨年秋から始まった12人の新しい現実です。IZONEはその誕生から一年という時間をファンと共に着実に重ねて、多くの素晴らしい景色を世界中で繰り広げて来ました。

その時間を無理に巻き戻すことで生まれるあまりに大きな損失は、もし今そこに正義という目的があったとして、果たして正当化できるものでしょうか。

十分な愛を受けて立派に育った存在を、その生まれの手続きに問題があったからと言って後からその生を絶とうとする過酷、それを正義感の下で行おうとする危うさには注意すべきだと思います。

 

そしてこの点に関してはもうひとつ感じることがあります。

私はIZONEの標榜するコンセプトが人生を正面から肯定する楽観主義だと考えています。

そしてあの12人はこの1年を通して全身でそれを表現してきた。舞台の上だけでなく、楽屋でも、いつでも、どこでも。

歌として歌うだけでなく、普段の行動を通して人々を鼓舞し、前を向かせるというアイドルの鑑のような活動を懸命に続けてきた。多くの人がその姿を見て励まされた。


にも関わらず出身番組に不正があったからと言って、IZONEは操作されたグループであり、間違った存在であるかのように主張する人がいる。

IZONEがこの一年間の努力を通して現実に披露して来た素晴らしい姿に目を向けようとせず、本人達には直接責任が無いその出自を問題視して断罪しようとする。

これは親の罪を子にも着せようとするもので、そのような態度を果たして正義と呼べるのか疑問です。

 

「不正」メンバーが負うべき責任とは

解散を求めるのと同じくらい受け入れがたいのが、不正の結果繰り上がって選ばれたメンバーを退出させるべきという意見です。

これは人間に事実上の不可能を強いる論理、雷に驚いた人間を罰するような暴論です。

そもそも自分の知らないところで操作が行われ、結果利益を得た場合に責めることができないのは当然です。

しかし万が一、自分が有利な事を事前に知っていた練習生がいたとしても、私は即座に非難されるべきとは思いません。

例えばシナリオを事前に知っていた練習生が、アイドル業界という大人社会の中で圧倒的に力関係で劣後する若者であることを思えば、その状況を拒否など出来るはずがない。

断れば巨大企業であるCJから目をつけられ、そして事務所からは干されて、永遠にアイドルとしての夢を絶たれる。しかし受け入れれば今度のように不正をしたと指差される。

こんなふうに自分の夢を前に追い詰められた人間を、そう簡単に非難できるものでしょうか。

それに韓国のアイドル練習生と言えば下積み期間が長いことで有名で、5~6年などは普通のほうで、多い人になれば10年近いという人も居ます。

十代にとってのこの年月はもう、一つの人生です。

その人生を天秤にかけるような決断を、まだ20になるかならないかの人間に強いて、その結果を責める事が果たして正義なんでしょうか。

結果的に過ちに加担した人が居たとしても、そこで批判されるべきは練習生個人ではなく、この構造を作って追い込んだ大人達であるはずです。

 

プデュは就職詐欺なのか

もうひとつ私が違和感を覚えるのは、プデュ不正の直接の被害者である練習生達の境遇を喩えて言われる「就職詐欺」という言葉です。

もちろん、最初から選ばれる可能性がなかった事を知らずに騙された点においては間違いなく被害者です。従って参加練習生全員に対するエムネの謝罪はこの騒動を通して絶対に必要なことだと思います。

ですが、脱落させられた練習生達がただ単に騙されて話が終わった人たちであるかのような表現は少し違うのではと感じています。

 

個人的な話、一次脱落で姿を消した参加者であってもほとんどの人は顔を見れば分かります。プデュに出てた子、というだけで既にただのアイドル練習生とは違う。

今でもその後の動向が気になって追いかけている練習生はひとりふたりじゃない、というのは私だけに限った話ではないと思います。プデュを見ていた人なら大体はそうなると思う。

「あなた方はここに立っているだけで、既に何かを勝ち取った人達だ」みたいな事を、プデュのMCを勤めた4人の誰かが言っていたはずです。

この言葉は決して綺麗ごとではなく、プデュという番組の一面の真実を表現している。

 

途中で脱落しつつも番組出身という経歴を生かしてソロあるいは新グループで躍進したケースはプデュの4年間のシリーズを通して見ても全然珍しい事じゃない。

言ってみれば参加練習生は全員、順位に関係なく、もれなく出演した時点でアイドルとしてのエントリーシートを世界中に向けて配ったようなものだと思います。

確かにプデュには不正があり、糾されるべき罪がある。

しかし脱落しつつも番組出身の看板を背負ってその後の活躍に繋げていった人達を見ると、ごく一部の人間だけが利益を独占できた悪質な番組だったとしてプデュを全否定することも出来ないと思います。

 

CJ ENMの責任でIZONEを守るべき

CJ ENMやエムネットが過ちを犯したことに異存などありません。そして彼らはその責任を取るべきです。

しかし何度でも繰り返しますがIZONEというグループに直接の責任はありません。

そして無いものを求める事は出来ない。

よって彼らが絶対にやってはいけないのは、世間へ謝罪し、混乱を収めるという形でIZONEを解散・もしくはメンバー入れ替えを行うことです。

これは責任を最も弱い立場の人間に押し付けて事態の解決を図ろうとすることで、それ自体が非難に値する行為だと思います。 

 

一方でIZONEが今後も活動を続ける事がCJ ENMやエムネの利益となる構造そのものが不当だとする意見があり、これは理解できます。

そうでなくてもここまでの悪評をCJ ENMが得てしまった以上、IZONEがその傘下の事務所であるオフザレコード所属であるかぎり、一連の報道で傷付いたイメージを今後残された時間で回復するのは難しい。

だからもう、CJ ENMはアイズワンを手放すしかない。

具体的にいうと、これから一年半の間にグループが生み出すはずだった利益を諦める事を世間に示し、その代わりとしてIZONEを呪縛から解放する。

 

言うまでもなくこれは私の妄想です。でもこれくらいの事をやらないとIZONEの存続に対して世論は納得しないと思うし、騒動の大きさを考えれば責任の取り方もそれ相応のものにならざるをえないと思います。

これまでアイズワンのプロデュースを実質的に担ってきたのがプレディスであることを考えれば、以後は彼らが中心になってまとめて行けばいい。直接受け皿になってもいいし、IZONEのメンバーが所属する各事務所が集まって新法人を作るのでも良い。

そしてこれら新体制の構築に掛かる費用は全額CJが負担するべきです。

いわれ無き非難に苦しめられた彼女達に新しい環境・同じメンバーでの再スタートを保証することは、脱落練習生に対する謝罪と並び、彼らに求められる大事な責任だと思います。


やはりIZONEは悪くない

プデュに不正があった時にその責任者ではなく、そこから生まれたグループが、そこに属するメンバーが、まるで不正の象徴のように叩かれる構図はどう見ても理不尽以外のなにものでもない。

あれだけの人や資金が投じられた大型番組「PRODUCE」を巡って不正があったなら、大小関わらずそこに携わった人には何かしらの責任があるのかもしれない。

しかし現実的な問題はその人に負うべき実質的な責任があるかどうか、その責任の果たし方が適当かどうかであると思います。 

その意味で罪を償って身を削るべきはCJであり、エムネットの人間です。IZONEではありません。

そして今彼女達が受けているのは批判のフリをした、いわれなき中傷に過ぎない。

プデュをめぐり徐々に明らかになってゆくその実情は、そもそも参加者全員が始めから製作サイドに翻弄されるしかなかったことを示していると思います。

そしてIZONEメンバーもまた、他の練習生達とは結果こそ違ったように見えたけれど、同じく大人の誤った采配の影響を受けるしかない立場だったという事実を、この過酷な騒動の最中に強く感じています。

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IZONEは2018年10月29日にクォン・ウンビ、宮脇咲良、カン・ヘウォン、チェ・イェナ、イ・チェヨン、キム・チェウォン、キム・ミンジュ、矢吹奈子、本田仁美、チョ・ユリ、アン・ユジン、チャン・ウォニョンの12名でデビューしたアイドルグループで、この一年間の活動を通して世界中で愛されてきました。

そしてこれからの一年半も、この12人で更に多くの愛を受けるはずのグループです。

ここまで長々と書いてきた事はファンとしての心だけではなく、正義・公正という価値を今の状況で最大限実現することを考えた上での私なりの結論です。

何度でも繰り返しますが批判するべき相手を、責任を取らせるべき対象を、そしてその方法を間違えてはいけない。

今回の事件を通して正義を実現する事と、IZONEを今の12人として維持していくことは両立するはずです。