先日10月29日、IZONEが結成2周年を迎えた。普通のグループだったらデビューからこれまでの日々をお祝いの言葉と共に振り返るところだけれど、彼女達はあと半年で解散する予定になっている。最初からそのような触れ込みだったとはいえ、解散が現実的な日程として迫る今、思っていることを率直に表現すると、二年半はすこし長すぎた。
IZONEの二年
KPopグループにとってのデビューから2年という時間の長さは、たとえばTWICEは「LIKEY」を、Red Velvetは「ロシアンルーレット」を発表し、BTSは「I NEED YOU」で花様年華シリーズを開始するような意義を持つ。それぞれの個性がはっきりと浮かび上がり、思い思いの姿で存分に輝きを放ち誰にも邪魔されない、そんな時期。
そしてIZONEもまたデビュー以来の花三部作を終えてからの「幻想童話」リリースに続いて、現在は次のカムバが待たれているという充実した2年目を迎えている。
数字の上では、ファンの規模と熱意の目安となるCDの初動販売枚数記録が、先日BLACKPINKに抜かれはしたけれどガールグループで堂々の2位。そして全音楽番組一位も達成。アイドルにとってかけがえのない財産と言うべきそのファンダムは大きく、強い。
グループの中について見ても、メンバー同士の相性は良く、結束力は高い。
アイドルグループがそれぞれ個性の違う人間同士の集まりである以上、そこには相性の良しあしから生まれる軋轢があるのは普通で、実際そのようなゴシップを聞く機会は多い。でも少なくともIZONEからはそのようなノイズを聴くことは無く、逆に仲の良さを証明するようにケミという言葉で表現されるメンバー同士のチームワークが多く生まれてきた。ちなみに最近の個人的なお気に入りはユリ&ミンジュの互いに全く遠慮のない同い年ライン。
そして何よりKPopアイドルグループとしての芸術面から見た時の「女神コンセプト」と呼ばれる優雅で豪華なIZONEの姿。12名という大人数を持てあますことなく披露されるIZONE独自の舞台はこの2年で洗練を重ねて、多くの人気グループでひしめくKPopシーンにあっても代替できる存在は見当たらない。これはつまりIZONEそのものがひとつのKPopカテゴリーを表しているとも感じる。
このようにIZONEは目に見えるものもそうでないものも、二年と言う時間で多くを積み上げてきた。
懸念のようなもの
短くも華々しいキャリアの最後を解散という有終の美で飾ることはドラマの筋書きとして優れていて感動的ではある。確かに期間限定という設定はこのグループに儚い魅力のようなものを与え、何てことないアイドルの日常さえ特別に輝かせることがあった。自分も時にはそんな感傷に浸りながら、やがて来るだろう最後の瞬間を想像したりしていた。
でも一方で解散という言葉は、12名のメンバーほとんどにとってキャリアの寸断という現実を意味している。競争激しいKPopシーンにおいてそのことが及ぼす影響について思うとき、IZONEが成し遂げたものが大きい分余計に不安を感じる。けれど芸能界のどこに新たな居場所を見つけるにしても、ファンとしては変わらず応援していくという他ない。
ただ私には、そうした将来の成否にかかわる種類の話とは別に、二年半という時間でアイドルキャリアに区切りがついてしまうこと自体に関して懸念がある。それは例えば、アンニョンズについて最も強く感じる。
この二人は傍から見ると最も将来が開けているように思える。若く才能に満ちていて多くのファンを持ち、所属事務所はMonsta Xや宇宙少女を擁する中堅で、しかも時期的にそろそろ新しいガールグループを準備しても不思議ではない。IZONE解散後も次のキャリアへの移行がスムーズなのではと予想される。
でも個人的にはこうした順調に見える展開に違和感を覚える。
KPopアイドルグループの活動期間というのは大抵の場合契約に基づいて6,7年という事になっているらしい。そしてその期間の大部分を所属事務所の管理下で過ごす。その象徴がメンバーと同じ宿舎での合宿生活という事は良く知られている。
とすれば、もしアンニョンズの二人がIZONEの後にまた別のグループでデビューすることになった場合、彼女達は合計して10年にも届きそうな長期間を他人との共同生活で過ごすことになる。こうした拘束的ともいえる環境が彼女達に強いる負担はどれほどのものになるだろう。
しかも新たなグループに入るとなると当然一から人間関係を作っていくことになる。そこでは他のメンバーとのキャリアや知名度の差から軋轢の生まれることも容易に予想される。一年にも満たない期間で解散したI.O.Iでさえ、派生グループにおけるメンバー間の知名度の差が生む難しさが指摘されていた。
その後のアイドルキャリアを通してみた時に、二年半というIZONEでの貴重な時間が与えるものもあれば、事態を複雑にしてしまう側面もある。このようなリスクやストレスの可能性を想像した時、もしかしたら彼女達がIZONEの後でグループアイドルとしての活動を続けていくことに躊躇を感じたとしても、私は驚かない。
冒頭で挙げた先輩グループを見ても分かるように、2年と言う時間は一つのグループをほぼ完成させる。そのまとまりを解体してしまうという事は、いまIZONEという存在に結集しているあらゆる人々の才能や熱意に努力といった、すべて言葉では表し尽くせない価値を消失させるということで、それはほとんど衝撃的というのに近い。
IZONEの運営母体とされるCJENMの責任に絡めて言えば、彼らは「期間限定グループ結成」という看板を掲げた「PRODUCE」シリーズで多くの人達を振り回してしまった。その過去を考えると、投票操作だけでなく、アイドルのキャリアを期間限定という感動のシステムで無理に輝かせてきた方法自体が批判されるべきだとも言える。だとすると、利益の放棄などという即物的な方法ではない、何かもっと相応しい過去との向き合い方が別にあり得るのではと思う。
結局のところ二年半という時間は、限られた時を共にする少女達という感動の代価とするにはあまりに多くのものを積み重ね過ぎた。つまり解散させるには長すぎたというのが、IZONEの二周年に際して覚えた私の実感です。
いま思うこと
ここまで書いてきたことを考慮して、IZONEの将来に対して自分が希望している事を、実現可能性など無視して一応言葉にしておこうと思う。
私が望んでいるのは予定通りの解散でもなければ、活動休止期間やコロナ禍といった特殊事情を考慮したロスタイムのような期間延長でもなく、IZONEを通常の活動期間を持つレギュラーなアイドルグループとして編成し直すこと。一時的な延長に反対する理由は、上で触れたように2年半と言う時間が長すぎたため、これ以上中途半端に結末を伸ばすことはメンバーそれぞれの次のキャリアへの移行がますます難しくなると思うから。
更にこれまでの日本側製作陣との関係を整理して、新たに韓国活動と海外活動を一貫した構想の下で行えるプロデュースを行う。それに伴いCJENMはIZONE活動から利益を取らないという非常事態に区切りをつけ、メンバーそれぞれの所属事務所と公正に利益を分け合える持続可能で新しい体制を作る。そして生まれ変わったIZONEでコロナ後の世界を歌で彩り、これから3,4年ほどのキャリアの後に本当の活動終了を迎える。 それが私の希望すること。
期間限定グループという特徴が外れた時の影響は未知数で、そこから始まるのはまた新しい挑戦になるはず。でも今までどのKPopグループも通ったことのないIZONEだけの道を歩くという意味では、これまでと大きな変わりはないと思う。
ここまでかなり一方的な願望を並べて来たけれど、事態に少しでも流動的な部分が残っているとしたら、こうした想像にも少しは意味があるのではと思いたい。
ちなみに私が主張してきたことは、あくまで12人のメンバー全員が総意としてグループの存続でまとまることを前提にしている。ファンとして、WIZONEとしてはそうであって欲しいと願うけど、これまでの努力と献身を思えば、もし異なる結果であっても感謝の気持ちと共に受け入れて、それぞれの今後を応援する。
でも最後まで勝手なことを書かせてもらうなら、私にはあの12名のグループアイドルとしてのキャリア、その一番後ろに記される名前がIZONEであって欲しいという希望がある。
そして次の世代が見え始めたKPopシーンの中で、IZONEだったらその時にどういう姿を見せてくれるだろうという期待も持っているので、そのためには二年半などという時間では全然足りない、とも思っています。