猫から見たK-POP

ガールグループ中心に思ったこと書いてます。

とあるWIZONE、ラスコンをめぐる断章

ラストコンサートが終わって3日。まだ衝撃の余韻から抜け出せない。

3月10日、いきなり運営元から延期無しでの4月中の活動終了が発表され、その4日後のコンサートの中でIZONEは涙ながらにファンへ別れを告げた。日付はまだ3月14日だった。

更に3日たって今は3月17日。メディアは既にメンバーの今後の進路予想を始めたりなんかしてる。これまでIZONEを支えてくれたスタッフさんたちは、SNSでメンバーに賞賛と感謝の言葉を送ってる。どうやら本当に解散するらしい。でもIZONEは4月中も存在することになっていて、今もプラメや公式SNSで近況を教えてくれていたりする。何がどうなってるの。

そもそもIZONEというグループは二年半で解散するという謳い文句で華々しくデビューした。そんなグループが予定通り今年の4月で活動終了するというのは、まぁ最後にちょっとドタバタしたけど、全体的にみると特に不思議はない展開とも言える。

なのにどうして私はこれほどまでに不安と疑問を感じているのか。

 

確かに私は活動延長という選択を支持してきたファンのひとりだった。だから約束通りとはいえ解散してほしくないというわだかまりはある。でも理由はそれだけではない。

IZONEの運営元をたどれば、そこは韓国の大企業であるCJENM。そんな組織がとる行動の一つ一つはあらかじめ熟考された計画に基づいているものだから、IZONEの二年半という活動計画は重い判断で動かしがたいものに見えるかもしれない。

ただ私は、同じプデュのプロジェクトグループであるX1の、専任2年半&兼任2年半の併せて5年という活動計画を聞いたとき、その杜撰な見通しに驚いた。KPop好きな人なら、あの過酷なスケジュールの中で一人のアイドルが2つのグループ活動を兼務するなどという曲芸のようなことが出来るはずがないとすぐに分かるはず。

X1は騒動に巻き込まれて早期に解散し、実際にその葛藤に直面することはなかった。でも私はこんな大雑把な先行きを平気で公言する大組織の姿を見て、この業界は意外と柔軟でおおらかなんだな、と思った。

つまり何が言いたいかというと、IZONEの2年半という期間設定もそこまで綿密な条件設定として掲げられたものではなく、ある程度の目安であり、事と次第によっては活動延長も普通にありえたのではということ。期間限定グループだったので時間が来ました終了ですはい終わり!という単純な話ではない。

現実にIZONEは大成功して強固なファン層を形成し、ガールグループ初動歴代1位を記録する存在にまで成長した。世間にも広く認知され、期待と共に活動延長の可能性を高める客観的な条件は揃いつつあった。

だからこそ3月10日、メディアは敢えて「当初の予定通り」4月活動終了という事実にニュース価値を見出した。これほどまでに大成功したグループでも、予定通り解散させてしまうということが一つの事件だった。

であれば、運営はなぜ解散に至ったのかを言葉を尽くしてファンに対して説明する必要がある。大きな決断に対してはそれ相応の内容を込めた説明が求められる。それがこれまでの2年お金と時間を投じてきた多くのファンに対するあるべき態度だ。あのような紙切れ1枚程度のコメントで済む話では無い。いま現在ファンの間に広がっている困惑の原因はまず、この時の運営の対応のまずさにある。

しかし以上は違和感の原因の一つに過ぎない。問題は次。彼らはアイドルを矢面に立たせることでファンに解散決定という現状の納得を無理強いした。彼らの言葉で説明する代わりに。その結果、最後の最後でかなり過酷なアイドルの光景をファンの脳裏に刻み付けることになるという、前代未聞の事態になった。

 

私はラストコンサートの感想が書けなかった。

パフォーマンス自体は、この日のための豪華なスペシャルステージを含む、今までの2年半を振り返る名曲の数々に彩られた素晴らしいものだった。IZONEの節目を飾るにふさわしいその舞台を、本来であれば感動と共に文章の形でまとめるつもりだった。でも出来なかった。

そもそもが騒然とした雰囲気のなかで進行していったコンサートだったと思う。それは当然の話であって、冒頭に挙げた経緯もあり、ファンは終始アイドル本人の顔色を伺いながら、今見ているコンサートがラストなのかラストでないのかを必死に察しようとしながら見ているのだから、ステージにうまく集中できるはずがない。そんなコンサートの決定的な瞬間は、最終日である14日の最終盤に訪れた。

自分はKPopファンになってから4年ちょっとの人間で、今回のように応援しているグループの解散コンサートに当事者として立ち会うという経験自体が初めてだった。

そんな私が想像する解散の風景というのは、もちろん舞台に涙は流れるけれど、でもそれだけではなくて充実感や満足感に感謝の気持ち、そうしたものがないまぜになった、爽やかな淋しさと幸福感の出会う空間、そう思っていた。

でもあの日、自分が見たのはまるで違うものだった。

そこにあったのは母親から無理やり引きはがされる子供の悲痛さ、若木を無理やりに引き裂くような過酷さ。それはつまり、普通に悲しいだけで泣いている人の姿だった。そんな彼女たちが涙ながらにIZONEは今日で最後と口にする。あの天真爛漫なイェナまでがうつむいて顔もあげられない。

見ているのが辛かった。途中何かを間違えて、自分だけバッドエンドにたどり着いたのかと思った。

自分の好きなアイドルが本気で嘆き悲しんでいる。何か普通でないことが起こってる。はじめはそれを感動的光景というフレームの中になんとかおさめて見ようとした。解散コンサートというのはこんなものだと、終わってからも納得しようとしたが、無理だった。

私はいまだにメンバーが漏らした嗚咽の残響の中にいる。あの晩の光景を、いわゆる感動的な別れのものとして理解することを、私の良識は拒んでいる。

 

自分の好きなアイドルが苦痛を感じている光景を思い出しながらブログを書くというのもまた苦痛である。でもあの場面に関してはもうひとつ意見を加えておきたい。キムチェウォンさんの事だ。上に書いた光景の中心には彼女の姿がある。

とにかくすべてにおいてそつなく可愛らしい。些細な仕草までが、それはアイドルとしての節制の結果なのか、それとも生まれつきなのかが判断できないレベルで可愛らしすぎるアイドルクィーン、それがキム・チェウォンだった。

そんな彼女が満足に喋ることもできないほどにむせび泣き、何度気を取り直してマイクを握っても、拾うのは自分の嗚咽だけ。その光景は普通でないことが現場で起こっているという事実をこの上なく明確に示していた。

多くのメンバーがまともに喋れなかったあの一連の挨拶シーンは、当然のことながらWIZONEの感情を強く揺さぶり、この場面からはIZONEの活動終了をめぐる色々な憶測が生まれることになった。そのそれぞれに信ぴょう性の差はあるけれど、確かなことは分からない。

それでも万の言葉より一つの涙が雄弁に語る事はある。なぜここまでアイドル本人からも愛されるIZONEというグループが、このような形で終わらなくてはいけないのか、という疑問は今なお答えを得ることがなく、強く私の心を縛っている。

 

この場面についてはもう一つ触れておきたいことがある。

あの時の彼女が保護されるべき過呼吸状態だったのかどうかという論争があったらしい。でも私はそうした議論とは関係なく、スタッフにより保護されるべきだったと思う。アイドルとしての彼女を守るために。

この2年半のアイドル活動を通して200%の結果を出し続けてきた万能アイドル・キムチェウォンさんが、最後の最後で、自分では望まない姿をそれなりに長い間カメラの前に差し出さなくてはならなかったこと。ファンに向けて笑顔の代わりに悲痛な姿を見せなければならなかったこと。これらは彼女のアイドルとしてのプライドをひどく傷つけるものだったのではないか、と危惧している。

もちろん私はアイドル本人ではないので確かなことは言えない。でも自分の知るアイドルとは、カメラの前で求められる厳しい行動規範に応える分、それだけカメラの前の振る舞いに高いプライドも持つ人々だと感じてきた。チェウォンさんは特に、その高みを感じさせる存在だった。だからあの時誰かが割って入ったとしても、それは彼女を救いはしても、その弱さを示すことにはならなかったと思う。

もし、あの場面で彼女がいったん舞台から外されてしまえば、事態の異常性が浮き彫りになり、アイドルとファンの感動的な別れというフレームは一気に破綻へ近づいたはず。円盤化に際しても差し障りの出る事態になったかもしれない。でも彼女が何とか踏ん張ることで、かろうじて感動のラストという枠組みは守られた。彼女の犠牲によって。

 

最後に

今現在、IZONEの解散をめぐっては根拠不明の様々な説が飛び交っている。しかし、3月にコンサートやるよ→(コンサート直前)期間延長せず4月中に解散するよ→(コンサートの3月14日)今日が最後のIZONEです、という怒涛の解散劇に意図せず放り込まれたWIZONEが、混乱と恐慌に陥るのは無理もない。

もしかすると今後、説明を求めるファンの声に刺激されて、改めてお別れを告げるIZONEメンバーの映像なりが公開されるかもしれない。でもそれではこの間の光景の再演でしかない。いま必要とされているのは運営による真摯な釈明だと思う。

さらに言えば、エムネットは今夏に新しいグローバルガールグループプロジェクトを準備していると聞く。各事務所からはメンバーの再デビューや既存グループへの合流の動きもあるかもしれない。しかし忘れてはならないのは、韓国WIZONEはIZONEに初動販売数歴代一位の称号を与えた原動力であったということ。ここから解散への既成事実を積み重ねたり、あるいは抗議を黙殺するなどして対応を間違うと、彼らの強い行動力が思わぬ方向へ向かい、新たな因縁を生みかねないことを憂慮する。

 

あの日あの瞬間にIZONEとWIZONEの双方が傷つけられたまま、それからの日々を過ごしている。その傷とどのように向き合うのか。痛いと騒ぐのか、我慢するのか。対応はそれぞれ異なり、これまで一枚岩だったファンの間に葛藤が生まれる。

でも一つ確かなのは、語るべき立場の人間がそれを語らない限り、このわだかまりはこれからも消えないということ。運営は二年半を通して素晴らしい仕事をしてくれた。そのことに対する感謝は当然ある。しかしそれでも私たちは傷つけられたのだから、はっきりそれを自覚し、その理由を問うべきだと思う。なぜ最後の最後でこのような目に遭わなくてはならなかったのかを。

それをピリオドと表現すべきかコンマと言うべきかは、まだ迷いがある。 しかしとにかくCJENMやエムネはIZONEにとって大事なその一点を打ち損じた。だから打ち直さなくてはならない。まだ時間はある。